2010-01-01から1年間の記事一覧

メコンに抱かれて

デット島では、朝日とともに目が覚めた。 全くの自由な時間だ。暇にまかせて散歩し、気に入った木蔭を見つけては文庫本を開き、顔見知りと会えばカフェでお喋りし、疲れたら昼寝する。脳みそが溶けていくのが、自分でもわかる。 その日の午後は、コーン・パ…

メコンの匂い

船が目的地のムアンセーンに着いたのは、夜の8時ごろだった。メコンに浮かぶドン・コーンの東に位置する集落だ。とは言え、正直に話すと、降りたところがムアン・セーンだとわかったのは、その日の宿の看板が「ムアン・セーン・ゲストハウス」となっていたか…

天国に一番近い場所

ワット・プーまではチャンパサックから7-8km。自転車で1時間程度の距離だ。一本道だから迷う心配もない。空はどこまでも青く、白いでっかい雲が編隊を組んで流れていく。街を抜ければ道の脇にポツポツと家があるばかりで、両手に地平線を抱えて走ることがで…

ボッタクリ天国

嵐の翌朝、まだ暗いうちから荷造りをしてホテルの外に出るとトゥクトゥクの運転手が満面の笑みを浮かべて待機していた。頼んでいたわけでもないのに用意周到で、ご苦労なことだ。 そして、予想通りバスステーションまで10000キップとあり得ない値段を吹っか…

犬は逝ってもバスは進む

ビエンチャン行きのバスは、これまた7時出発と朝が早い。朝食代わりのフランスパン・サンドイッチを片手にバスに乗り込むと、一番前の席に、前の日にプーシーの丘であしらっていた小坊主が座っていた。より正確に言うと、この小坊主は僕の隣にいた日本人の女…

ルアンパバーンの日々

ルアンパバーンに着いた翌日は、朝の5時過ぎに目が覚めた。旅に出るとそうなのだが、相変わらず目覚ましいらずだ。 今朝のお目当ては、ルアンパバーンの名物だという早朝の托鉢。いつか見た世界遺産のVTRでもこのシーンが印象的だったような気もする。そうい…

Passenger's High

翌朝、前の日に食事をともにした旅行者たちには挨拶もせずに早々にゲストハウスを出た。扉を開けると、朝の光が眩しかった。やっと太陽とご対面だ。 ゲストハウスを出てしばらく歩いたところで、国境を越えるところで一緒だったフランス人2人組とバッタリ出…

チャンディーガルでル・コルビュジエを堪能する。

今回の旅は、成田〜デリーの国際線の往復と、デリー〜チャンディーガルの国内線の往復のチケットを予約していた。そもそも、デリーからダラムサラまでは夜行バスもあるのだが、今回は時間を金で買うというスタンスで、デリーからアムリトサルかチャンディー…

マナリへ(3)

陽が傾くと、一気に気温が下がってきた。 この日の宿は、温泉の裏手にある小汚いゲストハウス。汚いマットレスと虫満載っぽいブランケットがあるだけで、おまけに部屋の大きさのわりにはいやにでかい窓からはしっかり隙間風が入ってくる。夏に泊まるのであれ…

マナリへ(2)

翌朝、早々にホテルをチェックアウトして、歩いてバシスト村に向かった。 川に沿って少し歩いていくと、右の山肌に金色の屋根が素晴らしくチープなゴンパがあり、その続きにちょっとした集落が見えた。「あれはバシスト村?」と暇そうに車の検問をしていたお…

第3回ウェブプロデューサー勉強会に参加

一昨日、id:argこと岡本真さんが言いだしっぺとなって開催されている第3回ウェブプロデューサー勉強会なるものに参加してきた。前にやってた仕事はこういうことだった(と考えていた)けど、今の仕事は2回くらい捻らないと結びつかないところもあったりしま…

マナリへ(1)

ダラムサラで数日を過ごした僕には、残りの旅をどうするかという意味において、幾つか選択肢があった。 ようやく馴染んできたこの小さな街でもうしばらくのんびりするか、ル・ココルビジェの待つチャンディガールに戻るか、あるいはいっそのことデリーまで戻…

トリウンドにて

その日は、いつもより念入りに靴ひもを結び、少し早めにホテルを出た。 猿が我が物顔で闊歩する街の北側の坂を通り抜け、ダラムコット村の脇を通り過ぎ、うねる山道を登っていった。途中、四叉路があったので、左に進んだが、途中で道がなくなった。右の道を…

勉強会@中央線NEO 2010_1

2010/2/20 久慈達也(神戸芸術工科大学)「デザイナーのための秘密基地構想」 勉強会@中央線2008-2009(2009/12/10) 内と外(2009/11/13)

CCoN写真展2010出展リスト

Quiet Helsinki vol.1 2009.9 Quiet Helsinki vol.2 2009.9 Quiet Helsinki vol.3 2009.9 Quiet Helsinki vol.4 2009.9 CCoN2009 CCoN2008 CCoN2007 CCoN2006 CCoN2005

Learning Barに初参加

Learning bar(2月12日、東大:福武ホール)に参加してきた。今年の僕の個人的な問題意識として、「人の集まる場をどうコーディネイトするのか」というのがあるのだが、そのテーマが上がってくる一つのキッカケになった一冊の本で紹介されていたイベントがこ…

旅土産

所帯持ちのサラリーマン・バックパッカーの方ならご理解頂けるのではないだろうか。一人旅において、「土産」というものがいかに大切であるかということを。 しばらく仕事と家庭を放棄して、何の役にも立たない旅行なぞにウツツを抜かす自分への矛先を少しで…

青木敏郎『ベ−リング海オホ−ツク海沿岸旅行記』

青木敏郎 『ベ−リング海オホ−ツク海沿岸旅行記』 東京, 金港堂, 明治38(1906)年, 179p.<本文>日露戦争直後に出されたこの本は、青木敏郎という人物の千島旅行の顛末である。 明治36年5月、青木はかねてからの宿願だった北方での調査に乗り出すべく、友人…

名前を考える旅

家庭を持つ旅好きなら分かってもらえるだろうか。単なる道楽で旅に出るとなると、それなりの名目が必要だということを。そして、それが一人旅だとさらにハードルが上がるし、そしておまけに相方が妊娠中だったりすると、そのハードルはそこら辺の山より高い…

リタンのマニ石

ダラムサラでは一つ、どうしてもやっておきたいことがあった。 話は、2007年10月にカムを旅したときに遡る。成都からバスを乗り継いで辿り着いた理塘(リタン)。馬の代わりにバイクを乗り回したいかついカムパが闊歩する、大草原の中の小さな街だ。 街の北…

高野巽『馬賊横行記』

高野巽(弦月) 『馬賊横行記』 大阪, 堀田航盛館, 明治39(1906)年, 175p.<本文>馬賊とは、単なる騎馬の匪賊などではなく、むしろ当時の中国東北部(満洲)独特の社会状況が生みだした、パトロンをバックに擁した一種の「自衛武装集団」と言われている。…

リンク集

友人・知人のblogなどへのリンク集です(タイトルの五十音順→アルファベット順→数字昇順)。随時更新します。(最終更新日2011/4/4) 石田ゆうすけのエッセイ蔵///元ご近所さんにしてエッセイスト・石田ゆうすけさんのblog。 表も裏も見渡したい///気鋭のラ…

「2010年代の出版を考える」@阿佐ヶ谷ロフトAに参加

2月1日に阿佐ヶ谷ロフトAで行われたイベント「2010年代の出版を考える」に参加してきました。仕掛け人は、同じ某NPO法人に籍を置きながら面識のない沢辺均さんや某勉強会でスピーカーをお願いした仲俣暁生さんがたち。もともと開催されるのは知っていたのだ…

ダラムサラからの手紙

ヒマラヤ杉にタルチョがはためくこの街では、ホテルの部屋の前のベランダのベンチに腰かけて、ビールを飲みながら時間をつぶすのが日課になっています。昼はぽかぽかして気持ち良いし、夜は山肌に散らばったまばらな夜景が美しい。 このダラムサラという街は…

坂の多い街にて

俺の名前はシン。22歳だよ。近くのダラムコットの生まれさ。高校を出てすぐこのホテルに来たから、もう3年になるな。オーナー一家も住んでるけど、実際に取り仕切ってるのは俺だよ。この辺じゃまだ新しい方だからいろいろやんなきゃいけないのに、全部俺にや…

旅の終着地へ

初めてチベットに足を踏み入れたのは、2001年の秋。本来であればユーラシアを西進するはずだった旅が南下を余儀なくされた結果としての、言わば「偶然」の旅だった。けれども、そこで出逢った蒼い空と色鮮やかなタルチョと、そしてその下で一心に祈りを捧げ…

チベット文献図書館を訪問

仕事柄、旅行先で「Library」という言葉を目にすると、どうにも気になって仕方ない。僕の同僚にもそういうヒトは多いから、これも一種の職業病の一つかもしれない。 今回のダラムサラ訪問でも、ガイドブックに「チベット文献図書館」という言葉を見つけた途…

vol.11

2010.1 Harajuku, Tokyo. 大きな地図で見る

学術情報流通に関わる機関・企業による新春懇話会に参加

ちょっと前の話になるが、1月20日に国立情報学研究所にて開催された学術情報流通に関わる機関・企業による新春懇話会なる会合に参加してきた。個人で。 仕掛け人の一人であるid:argさんも書いているとおり、非公開の集まりなので内容についてはコメントしな…

#96

2009.9 Helsinki, Finland. 東風が強くなった。自分は羊と宝物の間で迷っている、と少年は思った。彼は今まで慣れ親しんできたものと、これから欲しいと思っているものとどりらかを、選択しなければならなかった。 パウロ・コエーリョ『アルケミスト:夢を旅…