Learning Barに初参加

Learning bar(2月12日、東大:福武ホール)に参加してきた。今年の僕の個人的な問題意識として、「人の集まる場をどうコーディネイトするのか」というのがあるのだが、そのテーマが上がってくる一つのキッカケになった一冊の本で紹介されていたイベントがこれ。折よく開かれることを知って申し込んだ次第(今回は400人を超える応募があったらしく、行けないかなと思っていたが、抽選の結果、会場キャパギリギリの200人に入れた!)。

Learning bar@Todaiは、「組織学習・組織人材の最先端の話題をあつかう研究者と実務家のための研究会」です(正式名称:組織学習システム研究会)。NPO法人 Educe Technologiesと東京大学大学院 学際情報学府 中原研究室が共催で3年前から実施しています。テーマを「企業・組織の人材育成」「企業HRD」「組織学習」などに焦点を絞って、2ヶ月に一度開催されています。

リフレクティブ・マネジャー 一流はつねに内省する (光文社新書)

リフレクティブ・マネジャー 一流はつねに内省する (光文社新書)


安藤忠雄デザインの空間が興味深いホールの地下二階の大きなセミナールームへ。入口で4000円の参加費を払って、ルーム後方のフードスペースでビールとサンドウィッチをもらって、ほぼ満席の中何とか席を発見。開始時間ギリギリだったので、周りの方との挨拶/名刺交換(義務付けられている)もほどほどに、スタート。
今回は、リクルート・エージェンシーのちゑや登録商標らしい)の取り組みを、店主兼つなぎビルダーの中村繁さんが紹介するのを軸に、前後にイベントの仕掛け人である中原淳さんが前後に会の狙いやまとめをコメントしたり、30分以上ものディスカッションタイムを挟んだりと、良く考えられた構成で、単なる座学で終わらない場づくりが行われている。
得てして、こういう時はなかなか場が温まらないのだけれど、名刺交換やアルコールが事前に仕込まれているお蔭で、周りの人とのディスカッションも弾む。参加者は、人材系の仕事に従事する人が多いようだったが、公務員・教師・医療関係者・研究者と多様で、僕の周りは、大手商社、旧政府系金融機関、人材派遣会社と所属も多様だった。
さて、肝心のちゑや。詳細は上のリンク先を読んでもらえばいいとして、僕の気になったポイントだけピックアップしておく。

  • 2006年に中村さんが「営業の現場を支援する」という目標の下に、個人的に始めた「社内向けサービス」。2008年に社長の命令で仕事になり、中村さんは専任になった。非日常を演出し一体感を醸成するためにネーミングを工夫したり、法被や暖簾を作っている。
  • 時には個人を想定し、時にはマスを想定してターゲット設定(特に、中間層の"4割"を狙う)したコンテンツを作るが、ちゃんとやらずに「怪しい場」をつくる。ただし、失敗した場合はすぐに改善する。また、様々な立場の社員を対象にしたコンテンツ/場の構築は今後の課題。コンテンツは、先輩に失敗談を語ってもらう「私の始末書」、エースのノウハウを学ぶ「●●塾」「実践「匠」道場」など。
  • 成果指標は、定量(実施回数、(新規)参加のべ人数)、定性(アンケート)の両面で取っているが、必ずしもそればかりではない(なお、参加率などは提示されなかった)。人材部門とも情報交換しつつ進めている。
  • 後継者を育てることも大事。イベントに巻き込んでどんどんやらせ、勘所は伝えていく。最終的にこういう活動がどこでも自律発生的に行われるのが一番良いので、ちゑやとしての活動の必要がなくなるというのが最終目標。

図書館員としては、これこそ企業のライブラリー/情報部門が取り組んでもいいようなものだと思ったりもするのだが、前例はないのだろうか。大学図書館で取り組んでいるラーニングコモンズなんかとも通底するように思える(少し前までなら労働組合の活動がこういった部分をカバーしていたが、どうしても"色"がついてしまうのでうまくいかない)。
そして、最後に中原さんがまとめていたのは、どれも頷くものばかり。

  • 類似の試みがうまくいかないのは、マーケティングの問題。あくまでも目的は、仕事/業務の向上であり、コミュニケーションの向上はその結果。
  • 仕掛ける際には、組織内サービスという意識を持つ。その際のポイントは、非日常空間の演出、変化し続けること、PDCAの徹底、メディアミックスなど。

こういった作法を踏まえたゲリラ活動というのは、自分も少しは経験しているが、非常に面白いし、組織としても重要なものに繋がることも多いが、継続していくのは本当に難しい。離職率の高いリクルートでこういう試みが定着していること自体が興味深いが、(1)仕掛け人の中村さん自身が生え抜きでリクルートという組織LOVEだということ、(2)途中の段階で業として位置づけられた、というところがポイントだと感じ(様々な仕掛けの巧妙さを前提としてその上で、という話)。
もちろん、組織文化によって取り組み方は色々あるのだが、非常に参考になるヒントが満載だった(あと、どこの組織でも同じような悩みを抱えていることもわかったし)。そこそこの規模の図書館組織なら内部での取り組みにも使えるし、図書館界の場合は組織などを跨ぐ形で色々な試みがなされているので、そこにも参考になることが多い。
最後に、素晴らしく楽しかった機会を用意してくださった中原さんや中村さんとそのスタッフの皆さんにはお礼を。色々なネタを仕込むことができました。あと、twitterでつぶやいていた皆さんにもお礼を。イベントの途中や終了後のtwitter上での議論もこのエントリーを書くのに参考になりました。

(10/2/18追記)Learinig barの紹介ビデオが作成されたということで、掲載(iPhoneいじっているところが一瞬だけ映ってましたorz)。