2008-01-01から1年間の記事一覧

#47

2008.9 Takayama, Japan. あらゆる境界は、わたしたちの想像や夢の源泉であり、始原のイメージ群が湧きいづる場所である。世界という存在の奥底をのぞきこもうとする誘惑と、寡黙な存在をことごとく征服したいという欲望とが、そこには渦をまき、蓄積されて…

中井弘『魯西亜土耳其漫遊記程 巻上』

中井弘 『魯西亜土耳其漫遊記程 巻上』 東京, 避暑洞, 明治11(1878)年, 44丁.<本文>中井弘(1838-1894)は、薩摩藩出身で、幕末・明治の二度にわたって英国留学の経験を持ち、帰国後は滋賀県・京都府知事まで務めた人物である。 明治9(1876)年、二度目…

大鳥圭介『長城游記』

大鳥圭介 『長城游記』 東京, 丸善, 明治27(1894)年, 74p.<本文>幕臣出身で、後に明治政府の官僚となった大鳥圭介(1833-1911)は、明治22年から清国公使として北京に駐在した。後に朝鮮公使も兼ね、明治27年の日清戦争の際には、外交の最前線でタフな交…

旅人のための図書館を夢想する

今年の12月16日、某勉強会で「旅人のための図書館を夢想する」という5分のスピーチをしたので、その内容を掲載しておきます。このテーマについては、日本有数の観光地・奈良の出身としても、サラリーマン・バックパッカ―としても、図書館業界に身を置く人間…

曜日点紅『布哇紀行』

曜日点紅(蒼龍) 『布哇紀行』 臼杵, 曜日点紅, 明治22(1889)年, 58p.<本文>明治に入ると同時に、ハワイへの移民事業が始まった。不況、出稼ぎ、余剰人口の整理・・・色々な動機や背景があったのだろうが、とにもかくにも日本人、特に九州・四国出身の…

#46

2004.3 Hatton, Sri Lanka. つぎからつぎへと無限の墓場へと進む無限の列車、みんな油虫だらけだ。 ジャック・ケルアック『荒涼天使たち』 大きな地図で見る 荒涼天使たち〈2〉作者: ジャックケルアック,Jack Kerouac,中上哲夫出版社/メーカー: 思潮社発売日…

釈宗演『欧米雲水記』

釈宗演 『欧米雲水記』東京, 金港堂, 明治40(1907)年, 330p.<本文>宗演(1859-1919)は、福井県生まれの禅僧(臨済宗)。 彼は、従来の禅宗の修行に励むだけでなく、慶應義塾で学んだり、スリランカに留学したりするなど幅広く知識を吸収し、また外国人…

#45

2008.5 Samarkand, Uzubekistan. 生涯、毎日旅しなければならなくて、しかも自分の顔を持ち運びそれを自分の顔らしく見せることを想像してみたまえ! ジャック・ケルアック『荒涼天使たち』 大きな地図で見る 荒涼天使たち〈2〉作者: ジャックケルアック,Jac…

#44

2002.1 Kolkata, India. 結局、人生も物語もそれをつづける理由はただひとつ「つぎになにが起こったか?」なのだ。 ジャック・ケルアック『荒涼天使たち』 大きな地図で見る 荒涼天使たち〈2〉作者: ジャックケルアック,Jack Kerouac,中上哲夫出版社/メーカ…

阿川太良『鉄胆遺稿』

阿川太良 『鉄胆遺稿』 東京, 平井茂一, 明治43年, 183p.<本文>長州生まれの阿川太良(1863-1900)は、元々は郡の書記をしていたが、地元選出の衆議院議員吉富簡一の秘書として上京、その後、庚寅新誌社に就職してジャーナリズムへの道へと入った。同輩た…

#43

2007.10 Lithabg, Tibet. いまそのことがわかった、ぼくらはみんなおなじでぼくらが一人で旅立てばすべてはうまくいくだろう。 ジャック・ケルアック『荒涼天使たち』 大きな地図で見る 荒涼天使たち〈1〉作者: ジャックケルアック,Jack Kerouac,中上哲夫出…

#42

2008.5 Samakand, Uzubekistan. 消えていく電光のように通過せよ、そして思いわずらうな。 ジャック・ケルアック『荒涼天使たち』 大きな地図で見る 荒涼天使たち〈1〉作者: ジャックケルアック,Jack Kerouac,中上哲夫出版社/メーカー: 思潮社発売日: 1994/0…

#41

2006.3 Delhi, India. だけどぼくにはわかっているのだ、避けるよりは通過する方がいい、と。 ジャック・ケルアック『荒涼天使たち』 大きな地図で見る 荒涼天使たち〈1〉作者: ジャックケルアック,Jack Kerouac,中上哲夫出版社/メーカー: 思潮社発売日: 199…

#40

2001.12 Varanasi, India. 世界を創造した不在の裁判官の手によって事物のなかに置かれた判決の不在にけちをつける理由は世界を創造しないぼくにはないのだ。 ジャック・ケルアック『荒涼天使たち』 大きな地図で見る 荒涼天使たち〈1〉作者: ジャックケルア…

#39

2007.6 Kuta, Bali. 世界はぼくが見るものによって救われるだろう。 ジャック・ケルアック『荒涼天使たち』 大きな地図で見る 荒涼天使たち〈1〉作者: ジャックケルアック,Jack Kerouac,中上哲夫出版社/メーカー: 思潮社発売日: 1994/05メディア: 単行本この…

#38

2001.12 Dhaka, Bangladesh. この都市はきみが好きなようにやらしてくれるだろう。 ジャック・ケルアック『荒涼天使たち』 大きな地図で見る 荒涼天使たち〈1〉作者: ジャックケルアック,Jack Kerouac,中上哲夫出版社/メーカー: 思潮社発売日: 1994/05メディ…

#37

2001. 3 Champasak, Laos. いまぼくは世界というあのくそ映画館に帰ってきていまそれをどうしようというのか? ジャック・ケルアック『荒涼天使たち』 大きな地図で見る 荒涼天使たち〈1〉作者: ジャックケルアック,Jack Kerouac,中上哲夫出版社/メーカー: …

矢津昌永『朝鮮西伯利紀行』

矢津昌永 『朝鮮西伯利紀行』 東京, 丸善, 明治27(1894)年, 132p.<本文>1863年熊本生まれの地理学者・矢津が、熊本の第五高等中学校奉職中の明治26(1893)年に行った朝鮮半島・シベリア旅行の一部始終を収めたのが本書である。旅程としては、釜山から元…

#36

2007.10 Chengdu, China. それは到来した、それはいつもぞくぞくするような季節に到来するのだ。 ジャック・ケルアック『荒涼天使たち』 大きな地図で見る 荒涼天使たち〈1〉作者: ジャックケルアック,Jack Kerouac,中上哲夫出版社/メーカー: 思潮社発売日: …

ラサにて(1)

翌朝、目が覚めると、真っ先にシャワーを浴びた。勢いよく出る湯で、旅の汚れを洗いおとした。 9時すぎにホテルを出た。ホテルの前の大通りを、方角もよく確かめないままに歩いていった。ラサの標高は3500メートル。酸素が少ないためか、足もとが少しフワフ…

大道寺謙吉『竜睡丸漂流記』

大道寺謙吉 『竜睡丸漂流記』 津, 共昌社, 明治36(1903)年, 187p.<本文>今回は、期せずして「越境」してしまった男達を紹介したい。 竜睡丸は、郡司成忠が組織した開拓事業団・報效義会所有の帆船である。本州から郡司が入植・開拓していた占守島へ物資…

ラサへ

夜になった。 暗くなるとチェックポストの監視が緩くなるからか、バスは止まらずに暗闇の中を走り続けた。気温はぐんぐん下がってくる。毛布を頭からかぶってひたすら堪える。真っ暗な車内を時々照らすような対向車もない。ひたすら漆黒の闇の中を、頼りない…

#35

2006.2 Leh, Ladakh. すべてうまくいくだろう、どこへいっても孤独は孤独だ、そしてぼくらが持っているものといえばただ孤独だけだ、そして孤独はそんなに悪いものではない。 ジャック・ケルアック『荒涼天使たち』 大きな地図で見る 荒涼天使たち〈1〉作者:…

ゴルムドを出発

昼を少し過ぎた頃、タクシーに乗せられて、街外れの貨物用と思しきターミナルに連れいかれた。人影は、ない。 てっきり、何人かの旅行者と一緒にラサまで連れて行かれると思っていたのに、どうやら客は俺一人らしい。 「このバスだよ。先に乗って少し待って…

#34

2008.4 Zenpukuji, Japan. 冒険の行進は運命をひきずりながら進む。 ジャック・ケルアック『荒涼天使たち』 大きな地図で見る 荒涼天使たち〈1〉作者: ジャックケルアック,Jack Kerouac,中上哲夫出版社/メーカー: 思潮社発売日: 1994/05メディア: 単行本この…

釣田時之助『南洋の富』

釣田時之助 『南洋の富』 大阪, 三光堂, 1911(明治44)年, 80+54p.<本文>本書は、南洋で成功した釣田が、帰国後に後に続こうとする、しかし具体的にどう行動を起こせば見当もつかない者をアジテートするために記した南洋渡航案内である。 前編・後編に分…

稲垣満次郎『南洋長征談』

稲垣満次郎 『南洋長征談』 東京, 安井秀真, 明治26(1893)年, 84p.<本文>稲垣満次郎は長崎生まれの外交官である(タイ駐在公使だった1900年には、釈迦の遺骨の日本将来に際して中心的な役割を果たした)。ケンブリッジ大学への留学経験を持ち、早くから…

#33

2008.7 Chichibu, Japan. 世界は逆さまなんだ、おもしろいね、世界はクレージーな映画なんだ。 ジャック・ケルアック『荒涼天使たち』 大きな地図で見る 荒涼天使たち〈1〉作者: ジャックケルアック,Jack Kerouac,中上哲夫出版社/メーカー: 思潮社発売日: 19…

#32

2005.5 Tokyo, Japan. すべてがひそかにうまくいっている世界の狂暴さのもとには荒涼はないのだ。 ジャック・ケルアック『荒涼天使たち』 大きな地図で見る 荒涼天使たち〈1〉作者: ジャックケルアック,Jack Kerouac,中上哲夫出版社/メーカー: 思潮社発売日:…

『海豹島出張員復命書』

『海豹島出張員復命書』 樺太民政署, 明治40年2月, 22p.<本文>今回ご取り上げるのは、樺太民政署が出した職員の出張復命書である。 樺太民政署は、明治38年8月から40年3月まで置かれていた南樺太を所管する行政機関で、大泊(コルサコフ)に置かれていた(…