大鳥圭介『長城游記』

大鳥圭介 『長城游記』 東京, 丸善, 明治27(1894)年, 74p.

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幕臣出身で、後に明治政府の官僚となった大鳥圭介(1833-1911)は、明治22年から清国公使として北京に駐在した。後に朝鮮公使も兼ね、明治27年日清戦争の際には、外交の最前線でタフな交渉の席についた人物でもある。
北京に住むようになって3年後の明治25年4月22日から29日の一週間、大鳥は休暇を利用して念願の万里の長城の見物に出かける。「例ノ世界ノ一大奇工」万里の長城はどうしても見たかったらしいのだが、多忙のためそのチャンスがなかったという。ともあれ、大鳥は部下や書生を引き連れて、北京からほど近い居庸関万里の長城に赴いた。本書は、その際の旅行記で、写真だけでなく、大鳥の趣味の和歌や漢詩が随所に散りばめられているのが特徴的だ。
明治27年、未だ戦火が止まないうちに大鳥は枢密院顧問官に任じられ、帰国した。その直後に出版された本書について、「下手の横好きの詩とか載せててとても人様に見せれるものではないけど、何かの参考になるかもしれないから出しちゃおう」なんてことを書いているが、満面の笑みを浮かべた大鳥の髭面が思い浮かぶのは、私だけだろうか。もちろん、清国を舞台にした戦争が日本に有利なうちに進んでいるという情勢もキッカケではあったのだろうけど。

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せっかく万里の長城の話になったので、2001年10月に万里の長城に行った際の写真を。行ったのは、甘粛省の嘉峪関。西の端です。ガタガタのレンタル自転車でまわりました。

ゴビ砂漠に面し、はるか遠くに祁連山を望みます。

懸壁長城は美しいフォルムです。

最後はこんな風にして長城は終わります。