鈴木経勲『平壌大激戦実見録』

鈴木経勲 『平壌大激戦実見録』 東京, 博文社, 明治27(1894)年, 32p.

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鈴木経勲(1853-1938)は土佐藩出身で、『南洋探検実記』(博文館, 明治25年)などの著作をものした南洋探検家として知られる人物だが、従軍記者として初めてカメラを携えて日清戦争に赴いた人物でもある。
そして、従軍記者としての鈴木の遺した成果が本書。扶桑新聞社(名古屋)の特派員として朝鮮半島に赴き、帰国後に名古屋市内で行った講演をまとめたものだ(残念ながら写真はない)。ちなみに、日本で最初に従軍記者として海外に渡ったのが台湾出兵の際の岸田吟香だが、軍が正式に記者の従軍を認めたのは、日清戦争からである。
1894年9月、平壌城に立てこもる清国軍を日本軍が攻撃し、半日で攻略した。戦闘としてはこの一言で済んでしまうが、鈴木のこの報告では、陣立て、戦闘の模様、捕虜の処刑、戦死者の埋葬などが豊富なイラストとともに活力もって述べられている。鈴木たちのような従軍記者の存在は、銃後の世論の盛り上げに大いに貢献したことだろう。
なお、本書の最後には(土地柄というこで)豊橋第18連隊の戦死者35名の氏名とその住所が掲載されている。