ぼく、オーディエンスのつもりでした

四国在住の某教授が高円寺で動画配信をやるというので、ジムでのトレーニング上がりに冷やかしがてら顔を出したところ、まさかの登壇となってしまい、思わず言ってしまったのがこの一言。
www.youtube.com

2019年12月21日に、某図書館員と某出版社編集者と、某教授が対談。高円寺三角地帯で、ちゃんと打合せしないでいきなり対談収録したもの。でもどこを切り取っても割とちゃんとした話をしています。特にニューヨーク公共図書館の話とかわりとちゃんとしてた。

事前の打合せがほとんどないままに、前半は「オルデンバーグのサードプレイス論」も引きながら「高円寺」について、後半は映画「ニューヨーク公共図書館 エクスリブリス」を題材に「公共」について、おっさん3人で語り合った90分。
「高円寺こそがサードプレイスだ」というパワーフレーズも出てきて、絶妙な間合いで会話を取り廻すホスト役の某教授のもと、楽しい時間を過ごすことができました。
某教授とお会いするのは3回目、某出版社編集者とは初対面ということで、微妙な緊張感が漂う配信/収録となったのですが、だからこそ内輪になり過ぎずに良かったのかもしれません。

それにしても、高円寺三角地帯の設備・雰囲気は素晴らしい。
正直、固定カメラによる決して質の高くない動画(中身じゃないです、念のため)を延々と視聴するのは苦痛だと感じるときも多かったので、少しばかりの費用さえ負担すれば(理論上は)誰でもこのクオリティの動画を配信できる…というこのモデル、数多のオーガナイザーのイベント魂に火を付けるはず。
問題は、「少しばかり」とは言え個人だと気軽には申し込めない費用をペイするだけの集客ができるだけの中身を用意できる能力・カリスマが自分にあるかどうか…ですが。

勉強会@中央線Z2020~新春の役

(58) 2020/01/10 高円寺HACO 佐藤洋一早稲田大学)「全米調査したけれど〜個人的大規模調査の陽と陰」

今回は、佐藤さんに、戦後占領期に日本で撮影された写真を求めて、アメリカの公文書館や図書館を訪問した調査での経験を元にお話いただきました。さらっと書きましたが、車で4万キロ走って、35箇所の図書館で150あまりのコレクションに目を通して、8万枚の写真を撮影する…というのは並大抵のことではありません…。
写真を使った都市史の研究という観点から写真を渉猟し、何が写っているのか、どう撮られたのか、なぜ撮られたのかを考えていこうとする佐藤先さんのアプローチは、太平洋戦争直後の日本占領期というある意味で特殊な期間を対象にした場合、必然的にアメリカに、公的・私的に残された写真を対象とすることになります(その際に、何が公的で何か私的なのか…という問題は当然あります)。佐藤さんが今回調査したアーカイブも、アメリカ国内でもまだ一部ですし、アメリカに留まらず当時の連合国全体に潜在的に資料が埋もれているかもしれませんし、更にいうと、個人が所蔵する写真にもまだまだ埋もれているものも多いでしょう(少し前に国立国会図書館が公開したモージャー氏撮影写真資料もこれに当たります)。
そう考えると、占領期という極めて限定的な期間であるにもかかわらず、対象とすべき写真もまだまだありそうだし、仮にそれらが全て明らかにできていたとしても、どのように研究するのか。考えられるべきことは多いですが、ディスカッションの中で出た「少なくとも機械(AI)が読めるようにはしておいてほしい」という一言は、極めて重要な指摘だろうと思います。
他にも面白いやり取りは色々あったのですが、印象に残ったのは、「自分は研究インフラを整備していると思っている」「アーカイブメタデータ含めて整理されるのが理想だが、そうなると逆に研究者としては宝を探すような楽しみが減る」という佐藤さんのコメントですね。
あまり深掘りできなかったのですが、今回のお話には、在外史料を用いた日本研究の歴史とそのあり方…という側面もありました。まだまだ論点はありますので、続編も企画できればと考えています。
f:id:yashimaru:20200114105619j:plain

避暑地及び湯治塲に於ける理想的圖書館

「避暑地及び湯治塲に於ける理想的圖書館」『図書館雑誌』3号, 1908年6月, p.58-59.

twitterで見かけたのだが、海外彙報のエントリーの一つのようだ*1
紹介されているのはアメリカはメイン州ポーランドの温泉施設、ポーランドハウスの図書室。
1895年に37冊の蔵書からスタートして、12年後には4,800冊を超えていたそうだが、その増加のほとんどは、施設側の購入ではなく、利用者の寄付によっていたというところがポイントだろうか。
日本にも草津町立図書館の温泉図書館もあるが、これはそのハシリと言えるだろう。

  1. 「SL銀河の宮沢賢治文庫」(2019/10/16)
  2. 「『観光文化』243号「特集:観光と図書館~地域の観光に図書館はどう寄与できるか~」」(2019/10/15)
  3. 「再びオランダへ」(2019/3/29)
  4. 「汽車中の図書室 簡単なる旅中の伴侶」(2017/5/26)
  5. 和田万吉の「旅客の為めに図書館」(2012/8/15)
  6. 『図書館雑誌』2012年8月号に「マレビト・サービス」を執筆(2012/8/14)
  7. マレビトサービス#2:西牟田靖編(2011/5/15)
  8. 同時多発的お花見ストリーム/マレビトサービス#1:石田ゆうすけ編(2011/4/7)
  9. 地域と観光に関する情報サービス研究会第三回研究会(2011/3/25)
  10. 地域と観光に関する情報サービス研究会第二回研究会(2011/2/22)
  11. 地域と観光に関する情報サービス研究会第一回研究会(2011/1/23)
  12. 地域と観光に関する情報サービス研究会(マレビトの会)発足(2011/1/11)
  13. 図書館と観光:その融合がもたらすもの(2010/12/27)
  14. Airport Library @スキポール空港(2010/9/8)
  15. 鼎談「まちづくり・観光・図書館」(2010/7/5)
  16. 観光と図書館の融合の可能性についての考察(2010/5/1)
  17. アーバンツーリズムと図書館(2009/3/24)
  18. Tokyo's Tokyo(2009/3/4)
  19. 旅の図書館(2009/2/12)
  20. 南益行の「観光図書館論(2009/1/27)
  21. 旅人のための図書館を夢想する(2008/12/27)
  22. 蛇足 「八重山図書館考」(2008/10/10)

*1:元ネタはPulic Libraries誌のようだが、現物は未確認

勉強会@中央線Z2019~中秋の変

(57) 2019/10/17 高円寺HACO 大沼太兵衛国立国会図書館)「Et cætera autour des Humanités numériques et de la « Digital Archive » en France」

直近の自分の本業での関心事項から企画した今回は、「フランスにおけるデジタルヒューマニティーズ&デジタルアーカイブをめぐるあれこれ」ということで、珍しく?看板通りの「勉強会」となりました。
お馴染みの"Gallica"(国立図書館デジタルアーカイブ)から、"Persée"(国営のデジタル化した学術雑誌DB)、"HAL"(国営の機関リポジトリプラットフォーム)、"Huma-Num"(国営のデジタルヒューマニティーズのプラットフォーム)、"OpenEdtion"(オンライン出版の支援プラットフォーム)といった様々なプラットフォームから、"Testaments de Poilus"のような具体的なデジタルヒューマニティーズのプロジェクトまで、最近の事情を手広く紹介してもらいました。
ざっと挙げてみて改めて感じるのは、大沼さんが指摘していたように、「中央集権志向なのにプレイヤーが多く複雑」というのがフランスらしいと言えばフランスらしい…ということでしょうか。
この辺り、ただでさえ最近の変化が激しいのに、日本語や英語で動向をウォッチしている媒体があまりないので、非常に助かりました。言語だけなら何とかなっても、ではどこから、最低どこまで見ておけばいいのか…という勘所がなかなか難しいんですよね。
また、資料だけ見てもある程度は追えるのでしょうけど、気になったことをその場で確認したり、議論したりすることができる「場」があるのも良かったかなと感じています。
f:id:yashimaru:20191021180408j:plain

SL銀河の宮沢賢治文庫

汽車の乗客のために図書室を設けよう…と最初に言ったのは和田万吉で、そのことをここでも紹介したものの、それはあくまでも当時のことで、21世紀のこの時代にそぐうものではないと考えていた。
けれども、先日、岩手県SL銀河に乗ったときに、こういう展開ならアリだな…と思ったので、備忘のためにここにも書いておく。
f:id:yashimaru:20191015092930j:plain
SL銀河は花巻と釜石の間を結ぶ観光用のSLで、遠野に長めに停車するなどゆっくり5時間近くをかけて走っている。
5時間というと結構な時間だが、風光明媚な車窓だけでなく、停車駅での「おもてなし」や、車内でのプラネタリウム宮沢賢治のコスプレ写真撮影、スタッフによるボイラー焚きの解説など、アトラクションがふんだんに盛り込まれていて時間の長さを感じさせない*1
そんなアトラクション?の一つに、地元出身の有名な作家であり、沿線には文学館も建てられている宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」の自筆原稿や、本や雑誌などを並べた書棚(セレクションは宮澤文学の研究者でもあるロジャー・パルバース氏による)もあるのだ。
さいころ宮澤賢治の書いたものを読んだり、教科書でその名前を目にしたり…という人は多いだろうが、普段、改めてその著作を読む…という人はいないだろう。かくいう自分も含めて。
けれども、そのゆかりの土地を走る汽車の中の、有り余るほどの時間のうちのほんの少しの間でも、その著作を手に取って眺める…というのは、とても贅沢な時間のつかい方ではないだろうか*2
f:id:yashimaru:20191015092847j:plain
f:id:yashimaru:20191015092907j:plain

  1. 「『観光文化』243号「特集:観光と図書館~地域の観光に図書館はどう寄与できるか~」」(2019/10/15)
  2. 「再びオランダへ」(2019/3/29)
  3. 「汽車中の図書室 簡単なる旅中の伴侶」(2017/5/26)
  4. 和田万吉の「旅客の為めに図書館」(2012/8/15)
  5. 『図書館雑誌』2012年8月号に「マレビト・サービス」を執筆(2012/8/14)
  6. マレビトサービス#2:西牟田靖編(2011/5/15)
  7. 同時多発的お花見ストリーム/マレビトサービス#1:石田ゆうすけ編(2011/4/7)
  8. 地域と観光に関する情報サービス研究会第三回研究会(2011/3/25)
  9. 地域と観光に関する情報サービス研究会第二回研究会(2011/2/22)
  10. 地域と観光に関する情報サービス研究会第一回研究会(2011/1/23)
  11. 地域と観光に関する情報サービス研究会(マレビトの会)発足(2011/1/11)
  12. 図書館と観光:その融合がもたらすもの(2010/12/27)
  13. Airport Library @スキポール空港(2010/9/8)
  14. 鼎談「まちづくり・観光・図書館」(2010/7/5)
  15. 観光と図書館の融合の可能性についての考察(2010/5/1)
  16. アーバンツーリズムと図書館(2009/3/24)
  17. Tokyo's Tokyo(2009/3/4)
  18. 旅の図書館(2009/2/12)
  19. 南益行の「観光図書館論(2009/1/27)
  20. 旅人のための図書館を夢想する(2008/12/27)
  21. 蛇足 「八重山図書館考」(2008/10/10)

*1:全て宮沢賢治と「銀河鉄道の夜」に関係するものなので、SL銀河はちょっとした「走る文学館」とでも呼べそうな仕上がりである。

*2:パラパラと読むのに手ごろな絵本や子ども向けのj本が多いのも、宮沢賢治ならではだろう。

『観光文化』243号「特集:観光と図書館~地域の観光に図書館はどう寄与できるか~」

日本交通公社が刊行している『観光文化』243号(2019年10月)の特集が「観光と図書館~地域の観光に図書館はどう寄与できるか~」だった。中心となったのは、ここでも紹介した旅の図書館吉澤清良氏と大隅一志氏のお二人のようだ。
こういった特集が組まれたことを、まずは素直に評価したい。ここでも内容を簡単に紹介しておこう。
「図書館を取り巻く動向と観光振興」を整理した上で、高山市図書館「煥章館」八戸ブックセンター恩納村文化情報センター奈良県立図書情報館甲州市立勝沼図書館小布施町立図書館千代田区立千代田図書館東近江市立八日市図書館伊那市立高遠町図書館といった事例を紹介し、奈良大学の嶋田学氏と文筆家の猪谷千香氏という最近業界で話題の方々の対談で話を広げ、「観光と図書館~地域の観光に図書館はどう寄与できるか~」で視座を示す…という構成になっている。
個人的には、コラム「半世紀以上も前に提唱されていた“観光と図書館”」として、ここでも紹介した和田万吉南益行の(エッセイに近い)論文が紹介されているのも嬉しいところ。残念なところがあるとすれば、近年最初に南益行に再注目したであろうこのブログとまでは言わないまでも、『図書館雑誌』2012年8月号に寄稿した拙稿を参考文献に挙げるくらいのことはしてほしかった…という点(そもそも、当該号の特集は「観光ポータルとしての図書館」だったのだが、それへの言及もない)。

  1. 「再びオランダへ」(2019/3/29)
  2. 「汽車中の図書室 簡単なる旅中の伴侶」(2017/5/26)
  3. 和田万吉の「旅客の為めに図書館」(2012/8/15)
  4. 『図書館雑誌』2012年8月号に「マレビト・サービス」を執筆(2012/8/14)
  5. マレビトサービス#2:西牟田靖編(2011/5/15)
  6. 同時多発的お花見ストリーム/マレビトサービス#1:石田ゆうすけ編(2011/4/7)
  7. 地域と観光に関する情報サービス研究会第三回研究会(2011/3/25)
  8. 地域と観光に関する情報サービス研究会第二回研究会(2011/2/22)
  9. 地域と観光に関する情報サービス研究会第一回研究会(2011/1/23)
  10. 地域と観光に関する情報サービス研究会(マレビトの会)発足(2011/1/11)
  11. 図書館と観光:その融合がもたらすもの(2010/12/27)
  12. Airport Library @スキポール空港(2010/9/8)
  13. 鼎談「まちづくり・観光・図書館」(2010/7/5)
  14. 観光と図書館の融合の可能性についての考察(2010/5/1)
  15. アーバンツーリズムと図書館(2009/3/24)
  16. Tokyo's Tokyo(2009/3/4)
  17. 旅の図書館(2009/2/12)
  18. 南益行の「観光図書館論(2009/1/27)
  19. 旅人のための図書館を夢想する(2008/12/27)
  20. 蛇足 「八重山図書館考」(2008/10/10)

勉強会@中央線Z2019~盛夏の変

(56) 2019/8/2 高円寺HACO 野末俊比古青山学院大学)「情報リテラシー教育は本当に必要なのか―図書館を例にあらためて考える」

新シリーズ2回目は、久しぶりに図書館ドップリ(当会比)なネタとメンツでの開催となりました。

というこの(若干煽り気味の)問いは、このテーマで長年研究されてきた野末さんによって発せられるからこそ、重みをもちます。
野末さんの軽妙な仕切りの下で議論は弾み、そして問いが問いを呼ぶ、刺激的な展開となりました。

議論は大いに盛り上がったのですが、盛り上がり過ぎた結果、ご用意いただいた半分しか開陳できないうちに時間切れとなってしまいました。
一応書いておくと、前半部分の結論としては、必要なのは大学教育のためではなく、社会を生き抜いていくための「情報リテラシー」は必要だよね(意訳)、という感じでした。
では、それを図書館サービスにどう落とし込んでいくのか…。
今回は、野末先生が手掛けていらっしゃる某新図書館構想プロジェクトでのアレコレを元にしたお話でしたので、プロジェクトのフェーズがもう少し進んだところで、「後半」をお伺いする機会が持てればなぁ…と厚かましくも考えています。

f:id:yashimaru:20190807092411j:plain