勉強会@中央線Z2019~盛夏の変

(56) 2019/8/2 高円寺HACO 野末俊比古青山学院大学)「情報リテラシー教育は本当に必要なのか―図書館を例にあらためて考える」

新シリーズ2回目は、久しぶりに図書館ドップリ(当会比)なネタとメンツでの開催となりました。

というこの(若干煽り気味の)問いは、このテーマで長年研究されてきた野末さんによって発せられるからこそ、重みをもちます。
野末さんの軽妙な仕切りの下で議論は弾み、そして問いが問いを呼ぶ、刺激的な展開となりました。

議論は大いに盛り上がったのですが、盛り上がり過ぎた結果、ご用意いただいた半分しか開陳できないうちに時間切れとなってしまいました。
一応書いておくと、前半部分の結論としては、必要なのは大学教育のためではなく、社会を生き抜いていくための「情報リテラシー」は必要だよね(意訳)、という感じでした。
では、それを図書館サービスにどう落とし込んでいくのか…。
今回は、野末先生が手掛けていらっしゃる某新図書館構想プロジェクトでのアレコレを元にしたお話でしたので、プロジェクトのフェーズがもう少し進んだところで、「後半」をお伺いする機会が持てればなぁ…と厚かましくも考えています。

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勉強会@中央線Z2019~初夏の変

一年がかりでやってきた10周年記念イベントが一区切りがついて、元号も改まって…ということで、やってることは全然変わらないので完全に気分の問題なのですが、「勉強会@中央線Z」という旗を掲げて12年目に突入していきたいと思います。
新シリーズ初回は、この4月に上京してこられた福島幸宏さんの歓迎会も兼ねて、一席お願いしました。珍しく、現在の自分の本業にガッツリ関係するネタでもあります。

(55) 2019/5/24 高円寺HACO 福島幸宏東京大学)「デジタルアーカイブの今後ー見世的な整理と個人的野望」

事前には、ざっくりと「今後の企みというか目指すところを話してほしい。それらを踏まえて議論しましょう」とだけ、福島さんにお願いしていました。
当日の福島さんからは、ここ四半世紀の日本におけるデジタルアーカイブ」の系譜とその射程範囲及び関係者をざっと整理した上で(「デジタルアーカイブ」は日本にしかない…という言説もあるような気がしますが(笑))、デジタルアーカイブという領域を設定し得るのか、或いは学問として成り立ち得るのか、そして「デジタルアーカイブ学会」とはどのような場であるべきなのか、という問いが提起されました。
今回の参加者は、奇しくも日本のデジタルアーカイブを引っ張る実務者・研究者・技術者が一堂に会していて、議論は大いに盛り上がりました(その他、評価指標や人材育成の話も出ていましたね)。その内容は福島さんのこれからのアウトプットに消化/昇華されるようなので、ここでは言及せずにそれを待つことにしたいと思います。
何はともあれ、福島さんのパワフルなキャラクターが全面に出た、とても楽しい時間でした。あんまりやらないのですが、テーマに即した参加者で固めると議論が一層ドライブするという、典型的な会だったと思います。どこかで続編を企画することにしますかね。
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スケベニンゲンへの道

 「オランダの有名な避暑地の名前、スケベニンゲン!」

 嘉門達夫がこう叫ぶ「学問」という歌を初めて聞いたのは、小学生のころだった。女友達から借りたカセットテープに入っていた曲だったと思う。
 いかにも小学生が喜びそうなその名前に、当時の私も例に漏れずに「なんちゅう名前やねん(笑)」と無知蒙昧な反応していたのだが、そのうち嘉門達夫を聴くこともなくなり、それとともに「スケベニンゲン」という名前も記憶の彼方に押し流されたのであった。

www.youtube.com

 

 そして30年後の2019年。野暮用でハーグに行くことになり、ガイドブックをパラパラと眺めていて気がついた。

「ハーグにほど近いビーチリゾートの<スヘフェニンゲン>って、あの<スケベニンゲン>か!」
 実は9年前にもハーグに行っているのだが、当時はこの事実を完全に見落としていたようだ。オランダに着いてから野暮用の都合で急きょハーグに立ち寄ることになっただけなので、ろくにハーグ自体のことを調べなかったからだろう。
 こうなると、9年前の忘れ物を回収するためにも、「どうしても行きたい」と思うのが人情というもの。行って何があるわけでもないだろうが、とにかくスケベニンゲンの地を自らの目で見て、自らの足で踏みしめたくなってしまったのだ。嘉門達夫の歌も、再び頭の中でリフレインするようになった。

 今回はハーグに3泊することになっているのだが、到着するのは夕方だし、その後の2日間は朝から夜まで野暮用で拘束されるので、空いているのは最終日の朝、フライトまでの数時間しかチャンスはなさそうだった。

 

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 そして、迎えた最終日の朝。それまでひどい時差ボケに苦しんでいたのだが、ようやく身体がこちらの時間に適応してきたようで、すっきり目が覚めた。シャワーと食事を手早く済ませて、準備も万端だ。
 ホテルの外へ出てみると、前日の霧は消えたものの相変わらずの曇天で少し肌寒いが、小雨がぱらつくこともなさそうだった。フライトには11時までにホテルを出れば十分間に合うので、それまでの2~3時間の間にスケベニンゲンまで行って帰ってくればよいことになる。

 ガイドブックの地図を見てみると、ノールドアインデ宮殿の近くにあるホテルからスケベニンゲンまで5km、トラムだと20分もあれば着いてしまう距離らしい。1時間もあれば問題なく行って帰ってこれるわけだが、それももったいない気がしたので、思い切って歩いていくことにした。ホテルを出てすぐの道を海に向かってひたすら直進すればいいだけなので、さすがに迷うこともないだろう。それに、行って帰ってくるだけになるかもしれないが、街の様子もより感じることができるかもしれない。
 シャツの上に薄手のフリースを着こんで、歩き始めた。

 

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 宮殿前の運河沿いに少し歩いてから、大使館などが並ぶ閑静な通りを抜けていく。早い…というほどの時間ではないと思うが、土曜日ということで人影もまばらだ。
 15分も歩くと、威容を誇る平和宮殿が見えてきた。開場までまだ少し時間があるらしく、門の前に観光客が10人ほど立っている。せっかくの機会なので見学したいところだったが、今回はパス。縁があれば、また訪問する機会もあるだろう。
 さらに歩を進めると、スケベニンゲン森林公園の入り口が見えてきた。公園に沿ってスケベニンゲンへと続く車道とトラムの軌道と並行するように、公園の中を小径が走っていたので、こちらを歩くことにする。適度にアップダウンもあるし、なかなか歩き甲斐のあるコースだ。東京に置き換えると、代々木公園の中のランニングコースを延々とあるいているようなイメージだろうか。
 こんなことならランニングシューズを持ってこれば良かったなぁと思いながら、ずんずん歩いていく。時折り自転車で疾駆する人や、犬を連れた人とすれ違ったりしながら20分ほど歩くと、公園が途切れた。次はどうやら、高級住宅街エリアのようだ。木立の向こうに瀟洒な建物がチラホラと見える。
 バスやトラムに次々と抜かれていくが、気にしないことにしてさらに歩くと、こじんまりとした市街地に入る。どうやらスケベニンゲンに着いたらしい。大きなスーパーや協会があったので、観光地ではないスケベニンゲンの中心地はこの辺りのようだ。
 さらに真っすぐ歩いていくと、これまでずっと並走してくれていたトラムの軌道が道なりに右折して逸れていくポイントに出くわした。恐らく軌道に沿って歩いていけば、スケベニンゲンのシンボルである華麗なクールホテルや大きな桟橋に着くのかもしれない。だが、ここまでの1時間近くの歩きで疲れていたので、海までの最短距離をとることにして、そのまま直進して少し細い通りに入る。
 この通りは地元のスーパーや八百屋などに混じって、観光客向けに魚を食べさせる飲食店や土産物屋も並んでいて、金曜日の夜などはさぞや賑わっていただろう。けれども、この時間だと多少の人通りはあるとはいえ、店は軒並みシャッターを下ろしており、まるでうらぶれた観光地のような味わいだ。

 

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 通りを抜けたところに教会があって、その前の坂を上ると、目の前に茫漠とした北海が飛び込んできた。
 どんよりと暗い雲が水平線に覆いかぶさり、少しかかった靄がその境目を曖昧にしている。不自然に大きな街灯は所在なげに立ちつくして、海からの風にさらされている。遠くには、でかい観覧車を積んでまるで打ち捨てられた戦艦のようなでかい桟橋が、海に向けてせり出している。そして、点在するシャッターの下りた建物が、季節外れのビーチの印象をさらにくすんだものにしている。
 まるで、ニール・ヤングの『渚にて』のジャケットそのままの光景だった。私が目にしたスケベニンゲンは、嘉門達夫が言っていたようなリゾート地でもなく、あるいはハーグ中央駅前に掲げられていたポスターのような、週末の笑顔溢れるレジャーランドでもなかったのだ。

 そのことが不満だったわけではない。
 むしろ、このまるで「地の果て」のようなスケベニンゲンに満足していた。それは、この日本人にとってインパクトのある名前を持つこの土地にようやく立つことができた、というだけではない。初めてユーラシア大陸の「果て」で海を臨むということができたということによる満足感なのだが、これには少し説明が必要だろう。
 18年前、私はユーラシア大陸の東の端・上海から西へ向けて進む旅に出た。しかし、与えられた時間と折からの国際情勢は私にパミールを越えてさらに大陸の「果て」までたどり着くことを許さなかった。そして、その後も大陸の「果て」に立ちどこまでも続く海を臨む機会は訪れなかった。
 しかしこの日、図らずもその機会が訪れたのだ。冷静に考えれば、ここは大西洋を臨むロカ岬でもないし、そのまままっすぐ行けばグレートブリテン島にほどなく突き当たるし、そもそも海に面してさえいればスケベニンゲンである必要もない。
 けれども、ここで私はどうやら、9年前の旅ではなく、18年前の旅の忘れ物を見つけたらしい。この日のスケベニンゲンが私に見せてくれたこの寂寥とした表情は、その心象風景にふさわしいものだったのだ。

 

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 しばらく海を眺めてから、桟橋の方には向かわずに、来た道を戻ることにした。
 縁があれば、またスケベニンゲンに来る機会もあるだろう。その時に、この街はどのような表情を見せてくれるだろうか。

再びオランダへ

オランダを再訪する機会があった。
久しぶりの海外だったので書きたいこともそれなりにあるのだが、まずは「旅」×「図書館」のネタで目に留まったことについて書いておく。

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ハーグ市中央図書館

一つ目は、ハーグの中心部という絶好のロケーションにあるハーグ市中央図書館
6階のフロアを持つ大規模な図書館で、当たり前のように置かれたコンピュータゲームや電子ピアノ、学生と思しき多くの若者が集うイベントスペース、セルフの貸出・各種料金支払い機、多様なバックグラウンドを持つ(ように見える)利用者など目を引くポイントは多いが、ここでは1階の写真に注目してほしい。
図書館の総合カウンターのすぐ左にあるのは、観光情報センター(と土産物ショップ)である。ビネンホフからもほど近いという好立地もあり、またカフェも併設されているということもあり、観光客と思しき人が入れ代わり立ち代わり訪れていた。
図書館自体で観光客向けのサービスや蔵書構築を行っているわけではなさそうだが、図書館という場所を起点に観光客を街へと案内していくという流れが自然に作られていることが窺えた。

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スキポール空港ライブラリー

二つ目は、スキポール空港エアポートライブラリー
実は開館直後の2010年以来の再訪なのだが、この9年の間に、空港と同様にライブラリーも大幅にリニューアルされていた。
とは言え、オランダに関する様々な言語で書かれた本をくつろいで読んでもらう―という基本的なコンセプトは変わっていない。「空港に図書館」というスタイルが着実に根付いていると言っていいだろう。
変わった点を挙げるとするならば、くつろぎスペースが大幅に拡張されたこと、ipadがなくなった代わりに平置きのサイネージがあつらえられていたこと、ピアノが置かれていたこと、といったところ*1
気になることと言えば、くつろぎスペースで本を読んでいる人は見かけなかったことくらいだろうか…。

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オランダ王立図書館
番外編として、再訪となったオランダ王立図書館についても。
ハーグ中央駅の目の前という好立地にあり、貴重な資料が並ぶ立派な展示スペースも備えているのだが、王立図書館という性質、分かりにくいエントランス、訪れたのが平日の昼間…といった幾つかの理由により、閑散としていたのは少々もったいなく感じられる。


おまけ。
ハーグにほど近いスヘフェニンゲン、否、スケベニンゲンの図書館がこちら(開館前だったので入っていないけど)。
名前のインパクト(日本限定)だけなら、世界屈指だと思う。
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  1. 「汽車中の図書室 簡単なる旅中の伴侶」(2017/5/26)
  2. 和田万吉の「旅客の為めに図書館」(2012/8/15)
  3. 『図書館雑誌』2012年8月号に「マレビト・サービス」を執筆(2012/8/14)
  4. マレビトサービス#2:西牟田靖編(2011/5/15)
  5. 同時多発的お花見ストリーム/マレビトサービス#1:石田ゆうすけ編(2011/4/7)
  6. 地域と観光に関する情報サービス研究会第三回研究会(2011/3/25)
  7. 地域と観光に関する情報サービス研究会第二回研究会(2011/2/22)
  8. 地域と観光に関する情報サービス研究会第一回研究会(2011/1/23)
  9. 地域と観光に関する情報サービス研究会(マレビトの会)発足(2011/1/11)
  10. 図書館と観光:その融合がもたらすもの(2010/12/27)
  11. Airport Library @スキポール空港(2010/9/8)
  12. 鼎談「まちづくり・観光・図書館」(2010/7/5)
  13. 観光と図書館の融合の可能性についての考察(2010/5/1)
  14. アーバンツーリズムと図書館(2009/3/24)
  15. Tokyo's Tokyo(2009/3/4)
  16. 旅の図書館(2009/2/12)
  17. 南益行の「観光図書館論(2009/1/27)
  18. 旅人のための図書館を夢想する(2008/12/27)
  19. 蛇足 「八重山図書館考」(2008/10/10)

*1:隣に空港ミュージアムもあったが、これは前もあったような気がする。

勉強会@中央線10周年記念企画第5弾

平成最後の開催となる10周年記念企画第5弾は、「百科事典」を取り上げました。

(54) 2019/2/7 高円寺HACO 斎木小太郎(ポプラ社)「「百科事典」を本気で考えようぜ」

学校での百科事典を使ったワークショップの紹介から、「百科全書/事典ってそもそも…」「日本での百科事典の編まれ方/読まれ方って…」「子どもの調べ方学習って…」*1という話に展開していき、楽しい時間を過ごすことができました。個人的には、西洋と日本の百科事典の編まれ方/読まれ方の違いは、リベラルアーツに対する違いの現れなんじゃない?というネタが興味深かったですね。
参考文献はこちら(結果として「子どもたち」のためだけになってない…というのがミソ)。

ちなみに、帰り道に「ポプラディア買おうかなぁ」と思ったのは、主宰の私だけではなかったようです。
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1年間続いた10周年記念企画はこれにて終了。
元号の到来とともに、仕切り直しての新シリーズとなる予定です(やることはあまり変わらないと思いますが…)。

*1:この話題に限らず、この集まりだと、ある種の「勝ち組バイアス」(経済的な意味ではなく…)がかかってしまうので、その点は要注意かもしれません

勉強会@中央線10周年記念企画第4弾

10周年記念企画の第4弾は、「コミュニティのデザイン」、「図書館におけるデザイン」に続く、デザイン談義シリーズの3回目として、具体的な事例・実践をベースに「図書館のデザイン」について考えてみよう…ということで、千葉大学のアカデミック・リンク、大和市文化創造拠点シリウス、オーテピア高知図書館等の近年の注目案件を多く手がけるデザイナーの酒匂克之さんをお招きしました。

(53) 2018/12/10 高円寺HACO 酒匂克之(丘の上事務所)「(無題)」

これまで手がけてきた(あるいは仕掛かり中の)様々な空間を紹介してもらう中で、酒匂さんが「この部分は不本意なんですよね…」とつぶやくことが何度かありました。
酒匂さんは施設の設計会社から空間や什器のデザイナーとしてプロジェクトに参画されてきました。発注者や設計会社の方針やコンセプト、思い等を踏まえて幾つものプランを提案していく中で、自分の意に沿わない決定がなされることがある、と。それがプランをより良くするものであればよいが、そうでない場合もあって、自分の名前の名前でデザインしたものであるにも関わらず、「不本意」なものが出来上がってしまっている…そういう趣旨でした。
どこの世界でもよくあることと言えばよくあることです。
では、その「不本意」を出現させないためにはどうすればいいのか。
もちろん発注者ー施設整備担当なのか施設運用担当なのか、複合施設の場合は…と簡単に整理できないのですが-や受注者のレベルの問題もあるでしょうが、酒匂さんは「自分たちデザイナーと対等な関係であってほしい」とも語っていました。
発注者と受注者の上下関係、元受けと孫受けの上下関係…建築に限らず大きなプロジェクトには様々な「対等ではない関係」が埋め込まれています。その関係をうまくコントロールしながら意思決定のプロセスをデザインしていけたら…と感じながら、アルコールも入って円滑にまわる議論に身を委ねていました*1
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*1:それがどの立場からか、というのはケースバイケースでしょう。最近目にする、設計者と運用担当、市民を巻き込んだようなワークショップもそのソリューションの一つと位置づけられると思います。