「汽車中の図書室 簡単なる旅中の伴侶」
このネタの投稿はかなり久しぶりだが、前エントリー「和田万吉の「旅客の為めに図書館(2012/8/15)」の続きを、備忘をかねて。
シベリア鉄道紀行史―アジアとヨーロッパを結ぶ旅 (筑摩選書)
- 作者: 和田博文
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2013/01/01
- メディア: 単行本
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- アメリカ横断鉄道やシベリア鉄道等の欧米の長距離鉄道に設けられている図書室を参考に、鉄道院が神戸〜新橋間の鉄道(1,2等列車)に試験的に設けることにした。
- 喫煙室の一角に書架を設け、本を(120-130冊くらい置きたいところ)差し当たり40冊ほど置いて、乗客に提供する。車掌が管理を担当する。
- 本は、富山房から寄贈してもらった物語、狂言、紀行文、見聞集、寓話、講釈、笑談といった名著文庫で、あまり頻繁に交換する必要が無いものにした(広告的に新刊を置くこともあるが)。
この試みがどうなったのかは分からないが、日本で列車内の図書室があまり広まらなかったことを踏まえると、イマイチな結果だったのだろう。
前のエントリー紹介した坪谷善四郎の「汽車内備附図書に就ての希望」(1918年)も、もしかしたらこのときの試みを参考にしたものだったのかもしれない。
とは言え、「汽車に図書室を設ける」というアイデアだけに限れば、もう少し遡ることができる。1900年(明治33年)の朝日新聞に「貸出図書館設立の計画」という記事があり、ここには、
- 馬越恭平・黒田綱彦・五十嵐光彰・杉本市郎平・武内忠次郎・日下部三之介等10余人が株式会社貸出図書館の設立を計画している。
- 月々の利用料を一般サービス:25銭、特別サービス50銭に設定し、神田の本店から各地の支店を経由して各地の利用者のもとに新古の参考書、定期刊行物、日刊図書を配達して閲覧してもらう…という事業。横浜、京都、大阪といった大都市に「支館」を設置して所蔵図書を融通しあうとともに、また、汽車にも備え付け、旅客の閲覧に供することも考えている。
という趣旨のことが書かれている。
この記事の最大のツッコミどころは「株式会社貸出図書館」という企画そのものなのだが、これについてはまた改めて。
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