大道寺謙吉『竜睡丸漂流記』

大道寺謙吉 『竜睡丸漂流記』 津, 共昌社, 明治36(1903)年, 187p.

<本文>

今回は、期せずして「越境」してしまった男達を紹介したい。
竜睡丸は、郡司成忠が組織した開拓事業団・報效義会所有の帆船である。本州から郡司が入植・開拓していた占守島へ物資を運ぶ役割を担っていた。
しかし、明治32(1899)年2月、竜睡丸は、船体の修理を行ったハワイから日本へ戻る途上、太平洋上で遭難してしまう。流れ着いたのは、ハワイに近い無人島。本書は、無人島に漂着した十六人の男達が生き延びるための奮闘ぶりを収めている。男達はお互いに協力し合って、島で井戸を掘り、小屋を立て、食用のウミガメをを育て、アザラシを飼いり、先輩が後輩を教育する青空教室を開催したり・・・と、島の生活のあまりの充実ぶりにはただただ驚くしかない。
同年12月23日、通りかかった船に救出された男達は、無事に祖国の土を踏んだ。なお、この話は現在、下の本で比較的簡単に読むことができる。

無人島に生きる十六人 (新潮文庫)

無人島に生きる十六人 (新潮文庫)