岡雷平『南洋群島珊瑚島探検記』

岡雷平 『南洋群島珊瑚島探検記』 東京, 博文館, 明治43(1910)年, 304p.

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岡雷平は『やまと新聞』の記者で、1909(明治42)年から翌年にかけて農商務省水産講習所東京水産大学の前身)の練習船「雲鷹丸」に便乗して北太平洋を航海し、サイパン・グアム・沖縄などを訪問した。本書は、紙上連載としたその時の記録や、友人である長友寛がやはり北太平洋を航海したときの記録(後半の「北太平洋東部無人島の探検」)などを一冊にまとめたもの(序文は渋川玄耳、編集協力は岡崎綺堂)。
本書が刊行された明治43年には、「南へ!南へ!」と何とも扇情的な書き出しが印象的な竹越与三郎 『南国記』も刊行されている。いずれも世間に「南進論」をアピールする役割を担ったことは間違いない。しかし、竹腰というジャーナリスト/国会議員が書いたものと、後に『儲けばなし』(東亜堂書房, 明治45年)という本をものしてしまう岡が書いたものとでは、自ずと対象とされる読者は異なったていただろう。
そんなわけで、本書の内容も岡が行く先々で彼の地に暮らす日本人とその生態を紹介するものになっているのは当然かもしれない。読む者の冒険心を掻き立て、南洋での成功を夢見させる内容だ。