旅行記:明治

松本伴七郎『故野中平助君著 欧米紀行』

松本伴七郎編 『故野中平助君著 欧米紀行』 松本伴七郎, 明治27年(1894)年.<本文>野中平助という青年がいた。埼玉県出身。とはいえ、明治26年に27才の若さでこの世を去ってしまったので、彼を知る人は、殆どいないだろう。本書は、野中の早世を惜しんだ…

師岡国『板垣君欧米漫遊日記』

師岡国編 『板垣君欧米漫遊日記』 東京, 松井忠兵衛, 明治16年, 58p.<本文>自由民権運動の旗手として名高い板垣退助(1837-1919)は、明治15年から16年にかけて、盟友の後藤象二郎とともに欧米に外遊した。行き先は、彼の民権思想のバックグラウンドを考え…

北畠道龍『印度紀行釈尊墓況説話筆記』

北畠道龍(述), 森祐順(記) 『印度紀行釈尊墓況説話筆記』 大阪, 西岡庄造, 明治17(1884)年, 24p.<本文>北畠道竜(1820-1907)は、和歌山県出身の僧侶(浄土真宗西本願寺派)である。今回は、彼のインドへの旅について。 本来であれば、彼自身の手に…

東京美術学校校友会『河口慧海師将来西蔵品図録』

東京美術学校校友会編 『河口慧海師将来西蔵品図録』 東京, 画報社, 明治37(1904)年.<本文>河口慧海(1866-1945)と言えば、黄檗宗の僧侶にして、当時鎖国下にあったチベットに二度(1900-1902、1913-1915)にわたって単身潜入し、ラサで仏典研究を行っ…

万国寝台急行列車会社『西比利亜鉄道旅行案内』

万国寝台急行列車会社 『西比利亜鉄道旅行案内』 東京, 万国寝台急行列車会社, 明治44(1911)年, 157p.<本文> 今回は、いつもの旅行記から趣向を変えて、いつの時代も旅人に欠かせない<旅行ガイドブック>を紹介してみたい。日露戦争が終了するまでは、…

竹越与三郎『南国記』

竹越与三郎 『南国記』 東京, 二酋社, 明治43(1910)年, 374p.<本文>日清戦争以降、日本国内の世論は中国大陸への進出により重きを置く所謂「北進論」が大勢が占め、南洋や東南アジアなどの南方への経済的進出(殖民を含む)を説く論客(主に民間人)は少…

石井研堂『十日間世界一周』

石井研堂 『十日間世界一周』東京, 学齢館, 1889(明治22)年, 84p.<本文> ※第2版今回取り上げる『十日間世界一周』は、<旅行記>ではない。「旅行体験を語る」という体裁になっているのだが、「飛行船を使って10日間で世界を一周する」などというトンデ…

原田藤一郎『実践地誌 北清事情』

原田藤一郎 『実践地誌 北清事情』 東京, 青木嵩山堂, 1894, 99p.<本文>原田は、1892年から北東アジアを単身旅行した。船で上海に入り、そこから陸路北京まで北上し、そこから満洲を横断してからソウルまで南下する。その後は、元山から日本海沿いにウラジ…

関重忠『渡英のおもかげ』

関重忠 『渡英のおもかげ』 神戸, 中尾新太郎, 明治36年(1903年), 53p.<本文>日英同盟締結(1902(明治35)年1月20日)直後のイギリス国王エドワード7世の戴冠式に際して、日本からは明治天皇の名代として、小松宮彰仁親王が出席した。親王を乗せる艦隊…

岩永六一『台湾言語集』

岩永六一 『台湾言語集』 大阪, 中村鍾美堂, 明治28(1895)年, 83p.<本文>1895年4月の下関条約によって台湾が日本領となることが日本と清の間で取り決められた直後、日本は台湾に軍隊を進め、台湾を植民地化した。 そこで派遣された軍隊の一つ混成枝隊(…

緒方惟孝『魯語箋』

緒方惟孝 『魯語箋』 函館, 開拓使, 1873(明治6)年.<本文>緒方惟孝(1845-1905)という人物をご存知だろうか? 大阪薬剤師会会頭も務めたこともある明治時代の大阪の名士である、と言っても殆どの人は知らないだろう。むしろ父親の方が有名かもしれない…

末広鉄腸『北征録』

末広鉄腸 『北征録』 東京, 青木嵩山堂, 明治26(1893)年, 131p.<本文>末広鉄腸(重恭、1849-1896)は、政治小説で名を上げ、遂には衆議院議員にまでなった人物である(明治23年の第1回衆議院議員選挙で当選)。 末広は、明治21年から22年にかけて米欧へ…

村田清平『蒙古語独修』

村田清平 『蒙古語独修』 東京, 岡崎屋書店, 明治43年(定価25銭).<本文>日露戦争後の日本の日本にとってのモンゴル(蒙古)の重要性は、ここで語るまでもないことだろう。しかし、モンゴル語は日本人に馴染みづらかったのか、他の言葉でもある程度は代用…

依光方成『三圓五十銭世界周遊実記』

依光方成 『三圓五十銭世界周遊実記』 東京, 博聞館, 明治24年(1891年), 214p.<本文>明治の貧乏旅行者と言えば、中村直吉や、ここでも以前に紹介した中村春吉が比較的有名だけれども、貧乏旅行ということでは二人の先輩になる土佐出身の依光方成も忘れては…

池田有親『アラスカ氷山旅行』

池田有親『アラスカ氷山旅行』東京、雲梯舎、明治36.5, 186p. <本文>池田は、新潟県新発田の生まれ。明治22年(1889年)に渡米し、カリフォルニアの農場で小作農として働いた後、明治31年(1898年)2月10日にアラスカへと旅立った。折しもゴールドラッシュ…

家永豊吉『西亜細亜旅行記』

家永豊吉『西亜細亜旅行記』 東京、民友社、明治33.12<本文>家永豊吉(1862-1936)は、アメリカのコロンビア大学等で教鞭をとった学者だが、若い頃、現在のイラン、トルコを旅したことはあまり知られていない。家永は、台湾総督府に出仕していた明治32年(…

鳥居きみ子『蒙古行』

鳥居きみ子『蒙古行』 東京、読売新聞社、明治39.10<本文>著者は、アジアを中心にフィールドワークを展開した民族学者・鳥居龍蔵の妻。鳥居のよき協力者として、ともにアジアを踏破した「ツワモノ」で、日本人女性民族学者の草分け的な存在として知られて…

本願寺室内部編『印度撮影帖』

本願寺室内部編 『印度撮影帖』 京都、本願寺室内部、明治37.4<本文>西本願寺22代目法主大谷光瑞(1876-1948)は、仏教東漸のルートを踏破し、仏教遺蹟の調査・仏教文物の収集することを目的として、探検隊を3度中央アジアに派遣した。「グレート・ゲーム…

徳富蘆花『順礼紀行』

徳富健次郎(蘆花)著、東京、警醒社、明治39.12、475p<本文> 本書は、作家・徳富蘆花が、エルサレムなどのキリスト教の聖地を巡歴し、そしてロシアのヤースナ・ポリャーナにかねてから傾倒していた文豪トルストイを訪問した際の旅行記。 時は明治39年の日…

山田寅之助『羅馬観光記』

山田寅之助『羅馬観光記』 白鳥斯文閣 明治41年2月 192p.<本文> 少し前から、塩野七生の『ローマ人の物語』シリーズがベストセラーを記録し、正月の特番でもローマ人が取り上げられるなど、日本で「ローマ」はちょっとしたブームになっている。ユーロ高に…

小室三吉『緬甸紀行一班』

小室三吉『緬甸紀行一班』三井物産 明治23年 139p.<本文> 本書は、僕の知る限りでは、ビルマについての一番古い旅行記である。 著者の小室三吉(1863‐1920)は、三井物産勤務の商社マン。明治24年、三井物産からビルマの米の商況調査のために派遣された。 …

東京朝日新聞社『ろせった丸満韓巡遊紀念写真帖』

『ろせった丸満韓巡遊紀念写真帖』 朝日新聞写真班撮影、東京、東京朝日新聞社、明治39年10月旅行者:ツアー応募者合計374名ほか 渡航先:満州、韓国 渡航時期:明治39年(1906)<本文> 日露戦争後、陸軍の斡旋の下、日本からの満洲・韓国における日露戦争…

岩本千綱『暹羅老士安南三国探検実記』

岩本千綱(1858-1920)『暹羅老士安南三国探検実記』博文館, 明治30.9, 192p. 渡航時期:明治29年(1896)-30年(1897) 渡航先:タイ、ラオス、ベトナム<本文> 本書は、岩本が、相棒の山本賸介と共に僧侶に変装して、タイのバンコクから、フランス勢力下…

白瀬矗『千島探検録』

白瀬矗『千島探検録』東京, 東京図書出版, 明治30.4, 246p.旅行者:白瀬矗(1861-1945) 渡航先:千島列島 渡航時期:明治26年(1893)-28年(1895)<本文> 白瀬は、南極探検を行った(1910-1912年)ことで有名だが、今回は、彼が若いときに参加した壮絶な…

正岡藝陽『米国見物』

正岡猶一(藝陽)『米国見物』東京, 昭文堂, 明治43年, 688p.旅行者:渡米実業団(56名に通訳・婦人等を加える) 渡航先:アメリカ 渡航時期:明治42年(1909)<本文> アメリカ太平洋沿岸の商工会議所の招待に応じて、日本の商工会議所から渋沢栄一をはじ…

東京高等師範学校『遼東修学旅行記』

『遼東修学旅行記』東京, 東京高等師範学校修学旅行団記録係, 明治40.7, 730p. 旅行者:東京師範学校関係者合計192名(職員21名、学生168名、雇い人3名) 渡航先:中国 渡航時期:明治39年(1906年)7月13日から8月11日<本文> 明治20年頃始まったとされる…

石川周行編『世界一周画報』

石川周行編『世界一周画報』東京, 朝日新聞社, 明治41年9月 旅行者:ツアー客54名(うち1名は途中帰国、3名は現地に残留)、特派員2名ほか 渡航先:アメリカ、イギリス、ロシア、フランス、ドイツ、イタリア、スイスなど 渡航時期:明治41年(1908)3月18日…

佐々木悦蔵『樺太土人語日用会話』

樺太土人語日用会話 / 佐々木悦蔵編 東京 : 武装堂, 1905(明治38)年8月 旅行者:佐々木悦蔵(?-?) 渡航先:樺太(サハリン) 渡航時期:1900年頃 厳密に言えば、この本は旅行記ではないし、著者も旅行者ではありません。しかし、人が見知らぬ土地に出る際…

押川春浪『中村春吉自転車世界無銭旅行』

押川春浪『中村春吉自転車世界無銭旅行』東京, 博文館, 明治42.8, 326p. 旅行者:中村春吉(1872−1944) 渡航先:世界一周(中国、東南アジア、インド、中近東、ヨーロッパ、アメリカなど) 渡航時期:明治35年(1902)-36年(1903)<表紙> 現在、「貧乏旅…

吉田正春『波斯之旅 回彊探検』

吉田正春『波斯之旅 回彊探検』東京, 博文館, 明治27.4, 191p+地図.旅行者:吉田正春(1951-?) 渡航先:イラン(ペルシャ)など 渡航時期:明治13年(1880)-14年(1881)<表紙> 余は平生旅行を好むの癖あり、何事も目新しき境遇に出逢ひては、陳腐なる脳…