旅行記:明治

青柳郁太郎『秘魯事情』

青柳郁太郎 『秘魯事情』 大多喜町, 青柳郁太郎, 明治27(1894)年, 114p.<本文>1880年代の農村の疲弊は、結果として西日本を中心に多くの出稼ぎ農業移民を生み出した。 ペルーは、南米でも最も早く日本人移民が入った場所である。1899年、移民会社・森岡…

中橋徳五郎『台湾視察談』

中橋徳五郎述, 安達朔寿記 『台湾視察談』 大阪, 安達朔寿, 明治32(1899)年, 16p.<本文>中橋徳五郎(1861-1934)は金沢生まれの官僚・政治家・実業家。 中橋は逓信省の鉄道局長を辞して大阪商船社長に就いたすぐの1898年と1899年、台湾の視察に出かけて…

岩本千綱・大三輪延弥『仏骨奉迎始末』

岩本千綱,大三輪延弥 『仏骨奉迎始末』 高知, 岩本千綱, 明治33(1900)年, 96p.<本文>『暹羅土産 仏骨奉迎』(気賀秋畝撮影, 京都, 仏骨奉迎写真発行所, 明治34(1901)年)で紹介したが、明治33(1900)年、タイ王国より日本に仏骨(シャカの遺骨の一部…

川上操六『印度支那視察大要』

川上操六 『印度支那視察大要』 明治30(1897)年, 46丁.<本文>本書は、川上操六(1848〜1899、当時陸軍参謀本部次長)が、明石元二郎、伊地知幸介、田中義一といった錚々たる顔ぶれの陸軍の士官を従えて行ったベトナム視察の報告書である。 日本は、日清…

生江孝之『欧米視察細民と救済』

生江孝之 『欧米視察細民と救済』 東京, 博文館, 明治45(1912)年.<本文>生江孝之(1867-1957)は、宮城県出身で、キリスト教を基盤にした社会事業家として知られる人物である。 青山学院退学後、宣教師の通訳などをしていた生江は、明治33(1900)年、友…

徳江八郎『米国紀行』

徳江八郎 『米国紀行』 伊勢崎, 徳江八郎, 明治27(1894)年, 93p.<本文>徳江八郎は、群馬県伊勢崎に徳江製糸所を立ち上げた実業家。この旅行記は、徳江が伊勢崎の製糸業者を代表して、1893年のシカゴ万国博覧会への伊勢崎生糸の出品と併せてニューヨーク…

中井弘『魯西亜土耳其漫遊記程 巻上』

中井弘 『魯西亜土耳其漫遊記程 巻上』 東京, 避暑洞, 明治11(1878)年, 44丁.<本文>中井弘(1838-1894)は、薩摩藩出身で、幕末・明治の二度にわたって英国留学の経験を持ち、帰国後は滋賀県・京都府知事まで務めた人物である。 明治9(1876)年、二度目…

大鳥圭介『長城游記』

大鳥圭介 『長城游記』 東京, 丸善, 明治27(1894)年, 74p.<本文>幕臣出身で、後に明治政府の官僚となった大鳥圭介(1833-1911)は、明治22年から清国公使として北京に駐在した。後に朝鮮公使も兼ね、明治27年の日清戦争の際には、外交の最前線でタフな交…

曜日点紅『布哇紀行』

曜日点紅(蒼龍) 『布哇紀行』 臼杵, 曜日点紅, 明治22(1889)年, 58p.<本文>明治に入ると同時に、ハワイへの移民事業が始まった。不況、出稼ぎ、余剰人口の整理・・・色々な動機や背景があったのだろうが、とにもかくにも日本人、特に九州・四国出身の…

釈宗演『欧米雲水記』

釈宗演 『欧米雲水記』東京, 金港堂, 明治40(1907)年, 330p.<本文>宗演(1859-1919)は、福井県生まれの禅僧(臨済宗)。 彼は、従来の禅宗の修行に励むだけでなく、慶應義塾で学んだり、スリランカに留学したりするなど幅広く知識を吸収し、また外国人…

阿川太良『鉄胆遺稿』

阿川太良 『鉄胆遺稿』 東京, 平井茂一, 明治43年, 183p.<本文>長州生まれの阿川太良(1863-1900)は、元々は郡の書記をしていたが、地元選出の衆議院議員吉富簡一の秘書として上京、その後、庚寅新誌社に就職してジャーナリズムへの道へと入った。同輩た…

矢津昌永『朝鮮西伯利紀行』

矢津昌永 『朝鮮西伯利紀行』 東京, 丸善, 明治27(1894)年, 132p.<本文>1863年熊本生まれの地理学者・矢津が、熊本の第五高等中学校奉職中の明治26(1893)年に行った朝鮮半島・シベリア旅行の一部始終を収めたのが本書である。旅程としては、釜山から元…

大道寺謙吉『竜睡丸漂流記』

大道寺謙吉 『竜睡丸漂流記』 津, 共昌社, 明治36(1903)年, 187p.<本文>今回は、期せずして「越境」してしまった男達を紹介したい。 竜睡丸は、郡司成忠が組織した開拓事業団・報效義会所有の帆船である。本州から郡司が入植・開拓していた占守島へ物資…

釣田時之助『南洋の富』

釣田時之助 『南洋の富』 大阪, 三光堂, 1911(明治44)年, 80+54p.<本文>本書は、南洋で成功した釣田が、帰国後に後に続こうとする、しかし具体的にどう行動を起こせば見当もつかない者をアジテートするために記した南洋渡航案内である。 前編・後編に分…

稲垣満次郎『南洋長征談』

稲垣満次郎 『南洋長征談』 東京, 安井秀真, 明治26(1893)年, 84p.<本文>稲垣満次郎は長崎生まれの外交官である(タイ駐在公使だった1900年には、釈迦の遺骨の日本将来に際して中心的な役割を果たした)。ケンブリッジ大学への留学経験を持ち、早くから…

『海豹島出張員復命書』

『海豹島出張員復命書』 樺太民政署, 明治40年2月, 22p.<本文>今回ご取り上げるのは、樺太民政署が出した職員の出張復命書である。 樺太民政署は、明治38年8月から40年3月まで置かれていた南樺太を所管する行政機関で、大泊(コルサコフ)に置かれていた(…

野沢濶『記事紀行文』

野沢濶 『記事紀行文』大阪, 岡本偉業館, 明治37(1904)年, 247p.<本文>本書は旅行記ではなくエッセイ集なので、本来であればこのシリーズで紹介することはないのだが、読んでみると著者の野沢にもヨーロッパへの留学経験があったことが分かる。ここでは…

渋谷政雄『南洋便覧』

渋谷政雄編 『南洋便覧』 シンガポール, 南洋便覧編纂所, 明治44(1911)年.<本文>今回は、明治末期にシンガポールで刊行されたマレー半島(ボルネオも含む)のガイドブックを取り上げる。 このガイドブックはその名に相応しく、各都市の写真、マレー語会…

気賀秋畝『暹羅土産 仏骨奉迎』

気賀秋畝 『暹羅土産 仏骨奉迎』 京都, 仏骨奉迎写真発行所, 明治34(1901)年.<本文>名古屋に覚王山日泰寺という寺院がある。1904年に日本とタイの修好の象徴として建立された超宗派の寺院である。この寺には、1898年にインド北部で発見された釈迦の遺骨…

宮崎季樹『生蕃紀行』

宮崎季樹 『生蕃紀行』 木佐木村(福岡県), 宮崎季樹, 明治34(1901)年.<本文>明治28(1895)年の馬関条約(下関条約)で台湾は名実ともに日本の植民地となった。その台湾統治において問題となった一つに「生蕃(後には高砂族とも)」呼ばれた台湾原住諸…

浅沼藤吉『欧米周遊略記』

浅沼藤吉編 『欧米周遊略記』 東京, 浅沼商店, 明治34(1901)年, 11+10p.<本文>浅沼藤吉は1870年に東京で、外国商館から写真材料を仕入れて販売する写真材料商・浅沼商店(現・浅沼商会)を開業し、明治の写真界で指導的な役割を果たした人物である(顧客…

海野鉚吉『征清従軍日誌』

海野鉚吉編 『征清従軍日誌』 豊田村(静岡県), 海野鉚吉, 明治28(1995)年, 90p.<本文>「戦争」というものは色々な側面があるものだが、(決して幸福な形ではないが)「越境」の一つのスタイルであることは間違いない。 海野は、日清戦争に従軍した野戦…

南条文雄『印度紀行』

南条文雄 『印度紀行』 京都, 佐野正道,明治20(1887)年, 59p.<本文>南条文雄(1849-1927)は、岐阜県生まれの仏教学者。国内で幅広い学問を収めたのち、1876年にオックスフォード大学のマックス・ミューラーのもとでヨーロッパにおける近代的な仏教研究…

鳥尾小弥太『洋行日記』

鳥尾小弥太 『洋行日記』 東京, 吉川半七, 明治21(1888)年, 51p.<本文>長州藩士として戊辰戦争で各地を転戦し、維新後は陸軍を中心に要職を歴任した鳥尾小弥太(1847-1905)は、国防会議議員であった1886年2月より欧州出張に赴いた。本書は、横浜からイ…

大橋乙羽『欧米小観』

大橋乙羽 『欧米小観』 東京, 博文館, 明治34(1901)年, 214+40p.<本文>大橋乙羽(又太郎、1869-1901)は、博文館主人となった明治33(1900)年、ヨーロッパ・アメリカを巡る外遊へと出発した。その際の詳細は、彼の旅行記『欧山米水』(博文館, 明治33年…

高田善治郎『出洋日記』

高田善治郎 『出洋日記』 京都, 川勝鴻宝堂, 明治24(1889)年, 46p.<本文>本書は、イギリス・アメリカとめぐり、明治22(1887)年に帰国した高田善治郎(滋賀県出身)の旅行記である。緒言によると、その外遊の全体をカバーした旅行記を考えていて、その…

有文館『愚仙画報風景の巻』

有文館編 『愚仙画報風景の巻』 京都, 有文館, 明治45(1912年)年.<本文>山内愚僊(愚仙、1866-1927)は、東京の生まれで、明治23年に大阪毎日新聞社に就職。洋画家として関西の画壇で活躍し、明治34年の関西美術院の創立にも携わった人物である。 本画集…

林董『有栖川二品親王欧米巡遊日記』

林董編 『有栖川二品親王欧米巡遊日記』 東京, 回春堂, 明治16(1883)年, 58p.<本文>有栖川二品親王とは、有栖川宮熾仁親王(1835-1895)のこと。「二品」とあるのは、父・幟仁親王が弘化4(1847)年に、二品・中務卿となったことによるものだろうか(熾…

三上久満三『欧米新旅行』

三上久満三 『欧米新旅行』 東京, 精華堂書店, 明治41年, 179p.<本文>著者の三上久満三なる人物については、詳しいことは全くわからない。ただ、明治30年代の前後、アメリカに8年、ヨーロッパに3年滞在したことが、本書を読めば分かるばかりだ。 三上の関…

松本真彦『旅ころも 一かさね』

松本真彦 『旅ころも 一かさね』 宇都宮町, 吉田亀次郎, 明治23(1890)年, 11丁.<本文>松本真彦(虎蔵)は、宇都宮の人である。生年ははっきりしないが、元号が明治になる少し前の頃に生まれたようだ。 恩師の橘道守によれば、彼は幼い頃から勉学に励んだ…