小室三吉『緬甸紀行一班』
本書は、僕の知る限りでは、ビルマについての一番古い旅行記である。
著者の小室三吉(1863‐1920)は、三井物産勤務の商社マン。明治24年、三井物産からビルマの米の商況調査のために派遣された。
内容は、ビルマの地理、産業などの記述だけでなく、当然ながらビルマでの米作について詳細なレポートを中心に成っている。
当時、ヨーロッパに向けに日本を始めアジア諸国から多くの米を輸出していた。とは言え、日本にしても、現在ほど安定的に米の生産ができていたわけではなかった。そのリスクを回避するためにビルマからの米の買い付けを考えたことが、この小室派遣の狙いだったらしい。10年位前、米の減反政策と不作が相俟って、タイから米を輸入したことがあったことも記憶に新しい。
僕たちの身の回りには世界中から集められた食品が普通に氾濫しているけれど、そういったものがきちんと輸入ルートに乗るまでには、こういう商社マンの働きがあるということを再認識させられる一冊である。