外務省通商局『墨西哥探検復命書』

外務省通商局 『墨西哥探検復命書』 東京, 外務省通商局, 明治26(1893)年, 58p.

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明治25(1892)年、外務大臣榎本武揚はメキシコへの移民事業の可能性を探るべく、職員をメキシコに派遣した。本書はその際の報告書で、名義は橋口文蔵、宛先は1893年当時の外務大臣陸奥宗光となっている。
これによれば、同年10月3日から133日間にわたって、メキシコ各地の気候・人口・雨量・物産・衛生などを詳細に調査しており、土壌豊なメキシコへの移民を推進すべしという結論を出している。また、移民が行う事業として、折からの銀価格の下落により銀鉱山に代わって伸びていたコーヒー栽培事業を提言している。
榎本が構想したメキシコ移民は、1897年に実現することになる。しかし、資金不足や環境の劣悪さから1年で破綻してしまった。その跡地には「夏草やつわ者共の夢の跡」という松尾芭蕉の句碑が建てられているという。