海軍水路部『軍艦比叡濠洲航海報告』

海軍水路部 『軍艦比叡濠洲航海報告』 東京, 海軍水路部, 明治26(1893)年, 114p.

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「比叡」(金剛型コルベット)は、1875年にイギリスで起工、1878年より日本で就役した。トルコ軍艦エルトゥールル号生存者を送還するために僚艦「金剛」とともにイスタンブールに赴いたり(『軍艦比叡土耳古国航海報告』(東京, 水路部,明治26年))、日清・日露戦争にも参加するなどした後、1907年からは測量業務に任務、1911年に除籍となった(1912年に解体)。
本書は、明治24(1891)年9月20日から翌年4月10日まで、日本帝国海軍の練習艦「比叡」で行われた海軍兵学校18期の遠洋航海の公式記録である(前に紹介した『航南私記』(広瀬武夫遺著, 松平直亮校, 東京, 松平直亮, 1905年)は乗員の個人日記)。寄港地は以下のとおり。

24年9月20日 品川出発
  10月5日 サイパン(スペイン領)着
  10月8日 グアム(スペイン領)着
  11月21日 オーストラリア ブリスベン(イギリス領)着
  12月9日 オーストラリア シドニー(イギリス領)着
25年1月2日 オーストラリア メルボルン(イギリス領)着
  2月5日 ニューカレドニア(フランス領)着
  2月22日 ニューギニア マダン(ドイツ領)着
  3月23日 フィリピン マニラ(スペイン領)着
  3月26日 香港(イギリス領)着
  4月10日 品川着

この手の航海報告書は、航海終了後暫くしてから海軍水路部から刊行されており、比叡の場合、既に紹介したオーストラリア・トルコのものの他に、2度目の南洋諸島・オーストラリア航海の報告書ハワイ・北米西海岸航海の報告書なども残されている。