浅井誉至夫『暹羅国形勢一班』

浅井誉至夫 『暹羅国形勢一班』 和歌山, 浅井誉至夫, 明治28(1895)年, 3丁.

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著者である浅井(後に小笠原に改姓)誉至夫については、詳しいことは分からないが、和歌山在住の所謂「在野の知識人」にとも言うべき人物だろうか。何事につけても一家言ある人物で、かつそれなりに自由になるお金があったらしく、(特にこの時期)何かにつけて冊子を刊行している。県会議員の人物評をまとめた『和歌山県会議員論評』(明治26年、津田書店)、政治や軍事についての意見を述べた『所感一片』(明治27年, 自家版)、県内のあれこについて論じた『紀陽随見』(明治28年、百錬鉄雑誌社)、など。
この冊子では、岩本千綱によるタイ移民事業に共鳴し、県内諸氏向けにタイ移民を呼び掛けている。「30円ばかりの船賃さえ持っていけば、日本人であれば男でも女でも、百姓でも大工でも商人でも医者でも何か仕事はある」ということで、タイの地勢の概略紹介が中心となっている。ちなみに、岩本とは特に面識はなかったようだが、かなり綿密に情報は集めていたようで、「尋ねてくれれば情報を提供します」とも書いている。それにしてもこの冊子、どういう形で流通していたのだろうか?自費出版でもあるわけだし、知人を中心に配布しただけかもしれないが…。
ところで、この浅井氏、もしこの21世紀に生を受けていれば、必ずブログを開設していたと思う。