チェンマイ(2)

 翌日(2/22)は朝からチェンマイ郊外の山の上にあるワット・ドイ・ステープに行こうと思い、ソンテウ乗り場へ行った。乗るべき車はすぐ見つかったが、なかなか出発しそうにない。理由を同乗の初老のドイツ人に尋ねると、6人にならないと出発しない、とか。納得。ところが6人になっても出発しない。さすがにイライラしてきて(若いチェコ人は悟りきった顔をしているし、前出のドイツ人もウロウロするばかり。ヒッピーみたいなアメリカ人の中年夫婦はこれ幸い、と近くのマーケットへ買い物に行ってしまう始末。もう1人は野菜売りのオバアさん)、「何で出さへんねん!」と怒鳴ってもドライバーは平然と無視する。暫くして山の上へ運ぶらしい荷物を積んで、漸く出発した。こうなると、20分やそこら(?)待たされた位で怒鳴った自分が恥ずかしくなる。もっとも、ドライバーはそのマイナスを補って余りある様な凄いドライビングテクニックを披露してくれたので、彼にはムカツキどころかある種のプロに対する尊敬の念を覚えてしまったが。

 ワット・ドイ・ステープは景色と涼風以外はサッパリだった。金ぴかの仏塔も、訳の分からん象だの寅だののオブジェも、全く僕の美意識にそぐわなかった。ベンチで手紙を書いてから一回りをした後、早々に山を下りた(観光客と同じ様に、嬉しそうに記念写真をとっていたお坊さん3人連れは面白かった)。しかも、同じソンテウで。その夜に行ったナイトバザールもやはり期待外れだった。一言で言うなら、あまりにも観光客ズレしていたから、ということになる(観光客のくせにエラそうな、と言われるかもしれないが)。気に入ったデザインが無かったこともあるが、結局、何も買わなかった。といっても、全くつまらなかった訳ではない。売り子さん達との値下げ交渉も楽しかった。値切り方は人によって色々だが、僕の場合はこうだ。気に入ったのを見つけたら値段をきく。そこで高いと文句をつける。すると相手は少し下げる。僕はその値の60%を目安に値を言う。後はそこから両者ジワジワと歩み寄っていくわけだ。途中、「もういい!」とか言ってスタスタ立ち去る、などのポーズも入れるのだが、もうかっているような店だと、「そうか」と、引きとめてくれず、破談となってしまう。結局のところ、気の長い方ではない僕がしびれを切らしたり、下げ切らないうちに買ってしまうことが多かった。

 チェンマイは大都市のわりには、どこかしら落ち着いた雰囲気を持っていて、非常に好きだったのだが、着いて3日目(2/23)の朝、「もうここにはいられない」という気がして、何かに追いたてられる様に出ていった。アユタヤ、スコータイにも共通することだが、なまじ観光名所が多いと、何かしら、そこに行かなければいけないという一種の義務の如きものが湧いてくる。それが重荷だったのだ。賑やかな所も、遺跡のある所も、僕が行きたい所ではなかったようだった。「じゃあ何しに、タイくんだりまで来たのか」ということになるのだが。