チェンセーン(3)

 G.H.に戻ると、日本人の男3人連れがいた。きけば、J大生で、明日同じバスでバンコクへ行くという。小一時間とりとめもない話をした後、明日の早朝、朝日を見に行きませんか、と誘ってみた。起きれたら行く、という返事を貰って寝た。
 6:30過ぎに、例の展望台へ。多少の時間差こそあれ、K大生J大生も、皆やって来た。こんなタイの片田舎で日本人ばかり7人、揃って朝日を見るのも何か変な気分だった。ここなら何日でもいれそうな気がした。別にバスのチケットの予約をやめてもよかったのだが、そうしなかった。どこかで「北はもういい。満足した。次は海だ」と思っていた。「次は海だ」自分に言い聞かせた。

 バスの時間まで、全くやることが無かった。W大生とK大生はチェンマイ、チェンライへそれぞれ行ったし、J大生もバスの出発までメーサイに行くという。僕はそれこそ、ダラダラと過した。展望台で写生したり読書したり、近くのお洒落なカフェでアイスコーヒーを飲んだりしていた。本当は一昨日行った寺へ行きたかったのだが、チェンライのお気に入りのカフェレストランでタダというだけで(勿論美味しかった)がぶ飲みしたため、かかってしまった下痢がボディブローの様に利いてきており、僕から遠出する気力を奪ってしまったのだ。
 バスではクーラーがかなり利いていた。いや、利きすぎていた。2時間も走ったろうか、チェンライを過ぎた頃、ようやく日が暮れ始めた。窓に流れる風景を眺めていると、夕陽の下半分が木の形にギザギザに欠けているのに気付いた。何でやろう、と思ったが、よく考えると、太陽は山に沈もうとしているのだが、その山が近いのにもかかわらず、スモッグで全く隠れてしまっているため、あたかも夕陽がギザギザに欠けているかの様に見えたのだ。そういえば、スコータイへ行く途中のバスの中で「何て広い平野なんだ」とか思ってたけど、今になって考えてみると、ただスモッグで見えなかっただけかもしれない。
 Mr.ビーンのビデオに大笑いするJ大生の声を聞きながら、いつの間にか寝入っていた。