ゴールデン・トライアングル

 9:00頃、G.T.へソンテウで出かけた。約30分。今回の旅の北部での最大の目玉だったので、かなり気合を入れていったが、昨夜のK大生の「期待する程のものじゃないよ」の言葉通りだった。ソンテウを降りて近くの岡を登っていくと、展望台になっていて、古びた寺、少しばかりの土産物屋が静かに――まだ時間が早かったせいだろう――そばにたたずんでいた。木の葉っぱの間から見えるG.T.は確かに「オーッ、ラオスが右で左はミャンマーか。中国は見えへんけどあの奥にあんねんな」と、そのままの感想を抱かせてくれはしたが、「で、何?」と叫びたくなった。とは言いつつ、売り子さんに写真一枚、撮ってもらった。行く前からG.T.で写真を撮る時は、頭の上で大きな三角を腕を交差させて作ってやろうと密かに計画を練っていたが、とてもそんな気分になれなかった。

 岡を下って30分程、川沿いの道を散歩してみたが、かつての麻薬(主にアヘン)のメッカだったという妖しげな雰囲気はどこにも無く、田舎の観光地といった趣きだった。中国語の看板が目立つことが、ここが中国に近いことを感じさせる。そして11:00過ぎにはチェンセーンへ戻った。

 バスステーションの側で、焼きソバとコーヒーの軽い昼食を済ませた後、隣のバスチケット売り場へ行った。中には同い年位の女の子がヒマそうに少女マンガらしきものを読んでいた。「チケットが欲しいんやけど」「・・・」さすが田舎、何と彼女は英語を全く解さないらしい。ベンチでバスを待っていた、マレーシアへ出稼ぎに行くという中国の雲南から来たおじさん――彼も英語はさっぱりだが、ジェスチャーのプロである――の助けを借りて何とか明日の16:00発のバンコク行きのチケットを買ったつもりになり、例の展望台へ引き揚げた。相変わらずゴロゴロしていると、隣のベンチでダラダラしていた童顔の男が話しかけてきた。彼の英語力がぼくのそれかいずれかに問題があったらしく、彼は自分の経歴を一生懸命話してくれるのだが、僕には彼がタイに来る前はサウジアラビアでコックをやっていて、子供もいる(!)ということ位しか分からなかった。「いつ、チェンセーンを出るんだ?」「明日の16:00。バスでね」「チケットはもう買ったのか?」「勿論、ほらここに!」と、ポケットから取り出した瞬間、僕はとんでもないことに気付いた。チケットの日付が今日、つまり2/27になっていたのだ。僕は自分の言いたいことは彼女に伝わっている筈だ、と思い込んで彼女に確認しなかったのだ。今、3:30。後30分しかない。慌てて交換しに走っていった。イヤな顔はされたが、又例の中国人の助けを借りて、何とか切り抜けた。
 6:00過ぎ、シャワーを浴びてから夕涼みする為に、又展望台へ行くと、1人になったK大生がいた。暫くおしゃべりをしていたが、同じように夕涼みにやってきたと思われる2人連れの日本人女性に話しかけた。そしてまたまた流れで4人で夕食を、ということになり、再び豪勢な食事にありつくことに相成ったわけだ。しかも男女比1:3という、なかなか良いシチュエーションで。この2人連れは2人ともW大生で、昨日メーサイに行ったが(ここからメーサイまで20kmもない)、終バスに乗れず、仕方なく向こうで一泊してきたとの由。