バンコク(1)

 朝4:00、バンコク着。J大生と別れ、地図で近くに見えたバン・スーJC駅へ歩いて行こうと思ったが、誰に聞いても「遠いからやめとけ」と言うし、暗くて方角も分からない。仕方なくバイクタクシーで駅まで行くことにした。45Bまでしか値切れなかったが、走った距離を考えると、悪くはなかった。
 駅で15分程待って、やって来た列車に、「これはホアランポーン駅へ行くのか?」と確認してから乗った。方角音痴の僕は、人に聞かなければ北も南も(暗い所では、だが)分からなかったのだ。
 初めてのバンコクだ。楽しみでないこともなかったが、いかんせんチェンライ以来の下痢はいよいよひどくなってきていた。ホアランポーン駅で予約切符売り場が開くのを待っている間も、3度ばかりトイレとベンチの間を往復した。9:00頃、死ぬる思いで何とかパン一切れを胃の中に押し込んで、明日(3/1)のハジャイ行きのチケットを買うことにした。ホアランポーン駅のチケットはさすがコンピュータ管理されてるだけあって仕事が速い。「tomorrow、second class、upper bed!」と叫んだだけで事足りてしまった。
 下痢はバンコクに来てMAXになった感があった。胃が重い。歩くのもイヤだった。カオサンまでバスで行く気力も無く、トゥクトゥクを適当に値切ってカオサンへ行った。さっさと寝床を見つけて眠りたかったが、まだ9:00過ぎということもあってか、どこも満室だった。比較的静かなレストランでフレンチトーストを食べていると、いかにも頼りなさ気な日本人が入ってきた。このレストランの上のG.H.に部屋が空いているかきこうとする所の様だ。僕の中に一つの名案が浮んだ。「カオサンの相場は高い。しかも、殆どの部屋がツインだ。こいつを抱き込んで2人で一部屋をとればいい」
 この計略通り、僕は何とか、寝床は得ることがきた。と言ってもその部屋には窓も無く、僕がとったベッドには、不思議なことに、ファンの風が当たらなかった。バンコクの蒸し暑さを少しでも知っていれば、多少は躊躇したかもしれないが、今まで北の涼しい所ばかりにいたので、うっかり失念していたようだ。もっとも、下痢で一刻も早く安住の地が欲しかったので、敢えてその事には目をつぶっていて、という面もあったのかもしれないが。
 連れになった彼は、1コ下のS大生。どうやら海外は初めてらしい。久々に自分より旅慣れていない奴に出会って、ついつい偉そうに振舞ってしまったが、たまにはOKだろう。シャワーを浴びて暫くすると、漸く腹具合も少しマシになったので、National Museumへ行った。悲劇はここから始まった。博物館では見学する時間とトイレでうなる時間に大差がなかったばかりか、そこを出てから、近くの日曜マーケット(2/28は日曜だった)で、道路のド真ん中に組まれた仮設リングで、ムエタイを見ていると、とうとう目まいまで始まって、そうとう気分が悪くなってきたのだ(あまりにしんどそうな顔をしていたので、側で座ってみていた警官が、自分のイスを差し出してくれた程だった)。そこで、まだ3時前だったが、とりあえず例の連れを放り出してG.H.へ帰り、親戚の人に連絡をとって夕食の約束だけしてから5:00まで爆睡した。