錫蘭日記(下)

  • X月XX日(火)

 薄暗いうちから、ホートンプレインズ国立公園を歩き始めました。足首の状態も悪くなかった(流石インド式!)のですが、腹の方が若干下り気味です。紅茶とビールの飲み過ぎでしょう。雄大な公園を歩くこと1時間半、茂みの坂道を登り切ると急に視界が開け、道が途切れました。そこが“天涯”(world's end)でした。あまりの高さに足がすくむばかりです。遂に地の果てまで辿り着きました。もう山は十分ということで、次の目的地は、インド洋に面した要塞の街ゴールです。その後は、ひたすらチャーターした車をぶっ飛ばしてもらって、ゴールの夕陽に間に合うことができました。Amazing !

  • X月XX日(水)

 ゴールは日本より少し小ぶりな、カラスの多い街です。彼らはこの街の至る所に出没しますが、とりわけ海岸に多いような気がします。海から偏西風が強く吹きつける中、彼らは器用に飛びます。何か食べ物をつまむと、オモムロに海へ向かって飛び立ちます。そして強い風にあおられ、あたかも旋回するグライダーのように弧を描きます。また、彼らは非常に茶目っ気があり、海岸に放されている犬をからかったりしていて、生態がとても興味深い。ふと気付いて残金を確認してみると、1日1500Rs.ずつ使うといい計算でした。少しゼイタクをしていたので、うろたえました。数年前の僕なら、1日1000Rs.もかけなかったろうに、1500Rs.で不安になるとは・・・。シャッターを切る対象にしても、すっかり変った自分に気付きました。

  • X月XX日(木)

 ホテルを出た所で、面白い人に会いました。元スリランカ航空のパイロットというそのおじさんは、キャンディの自宅に戻る前に、ここコロンボの中心街のペターで買い物をしているというのです。そしていきなり、“ビールを飲もう”と誘われ、「コロンボ・プレス・クラブ」という所に連れていかれました。ところが、あまり話は弾まず、おじさんは“暑い、暑い”と繰り返し、しまいにはウトウトする始末。結局、適当な口実を見つけて一杯やりたかっただけなのでは?という気がします。お金は普通に割り勘でしたし。コロンボ、さすが首都だけあって、他にも面白い人々がいました。それはまた、別に。

  • X月XX日(金)

 旅に出て一週間して、初めて夕陽を見ました。インド洋に沈んでいく夕陽はどこまでも美しく、やがてピンポン球大の大きさになって、海面のモヤの中に姿を消していきました。この時間になるとすっかり涼しくなるので、子供や若者や大人たちも皆、海辺に出てきます。バレーボールをしたり、クリケットをしたり、散歩したり、井戸端会議をしたり。そう、ここはリゾートでもあり、漁民の街でもあるニゴンボです。ただ一つ解せないのは、牛や鶏より、魚のカレーや炒飯の方が高いこと。どうしてなんでしょう?今日のご飯は牛肉炒飯と、いつものLION BEERでした。

  • X月XX日(土)

 A.F.という漁師が昨日、話しかけてきました。日本でも2年近く働いていたことがるということもあって、少し日本語が話せました。そこで今日、彼の案内で、魚市場に行き、いくらかの魚と野菜を買いました。家で料理を作ってくれるというのです。昼過ぎ、彼の家に行くと、用意はできていました。奥さんの料理の腕は素晴らしく、大満足の味でした。子供たちも可愛く、食後、昔の写真とかを見ながら雑談していいたのですが、彼の家は他所と比べても貧しく、自身もあまり熱心にではない働きぶりである上に酒飲みで持病持ちで子供は6人・・・やはり来ました。帰ろうとすると、隣の部屋に連れ込まれて2人になったところで「金がほしい」。子供に見せたくないというのが、彼の最後のプライドだったのでしょう。