八日目:成都

 この日は、完全なオフ。文庫本を片手に、ブラブラと成都の街を歩いた。

 "中国郷土料理フェア"といった感じで各地の料理の屋台が立ち並ぶ文殊院の一帯をぬけて、オープンしたばかりの伊勢丹まで歩いた。親子丼(25元)を食べたのだが、久々に食べる日本米は、やはり腹にたまる。それにしても、オープンしたてなのにこのガラガラさっぷりはどうしたことだろう。他人事ながら、成都伊勢丹の行く末が心配になる。
 それから、お洒落な成都っ子が歩く通りを抜けて、近くのスターバックスに入った。日本ではよく見慣れたこのチェーン店も、コーヒー一杯で15元を下らないため、こちらでは完全に高級カフェ。その分空いていて、のんびりできるのが良いところだ。グッチやシャネルの店もある成都でも、沿岸部と同様に金持ちは金持ちらしい。

 夜は、いつもの大通りの安食堂でお腹を一杯にしてから、Sim's Cozyのバーで旅行者たちと、青島生ビールを片手にカードやゲームをして、今回の旅の最後の夜を楽しんだ。
 4年も旅をしているイタリア人、これから1年間ラサ近くの村で医療に従事するというスペイン人の女医、漢人の悪口ばかり言うくせに中国語がペラペラのベルギー人のSE、自称・海洋科学者のオランダ人、そして結婚しているのに一人旅をしている図書館屋の日本人・・・
 様々な国の旅行者が、偶然に同じ国を旅し、同じ日に、同じ宿に集まり、酒を片手に語り合う。これも旅の醍醐味の一つなのだ。