七日目:成都

 今回の旅の裏の目的は、実は成都の武侯祠に行くことだった。何を隠そう、僕は20年来の<三国志>ファンでる。横山光輝の漫画、吉川英治の小説、岩波文庫三国志演義、正史(和訳)、『蒼天航路』はもちろん読んだし、細野晴臣の音楽が格好いい人形劇も全部観た。

 ということで、成都二日目の朝、Guest Houseの小姐にもらった地図を頼りに、バスに乗って武侯祠に向かった(ちなみに、一応イタリア人を誘ってみたが、もちろん断られた)。武侯祠までは、市バスを使えば30分、2元で行けるのだが、入場料は65元も取られる。旅行者からはボッタくることしか考えていない中国の観光地お馴染みの料金設定である。
 武侯祠は、そもそもは蜀漢の皇帝・劉備の墳墓なのだが、後世にその周りに諸葛亮孔明を祀る殿が建てられ、名前が示す(武侯=諸葛亮のおくり名)ように、あたかも諸葛亮が主役であるかのような建物の配置になっている。つまり、諸葛亮を中心に、劉備関羽張飛やその他蜀漢の武将・文官の塑像が並んでいる。「軒を貸して母屋を取られる」といったところか。

 武侯祠を堪能してからは、近くのチベット人街をサラッと見て、それからブラブラと天府広場まで歩いていった。そこで、毛沢東先生に挨拶をしてから、広場を見下ろすマクドナルドで麻辣風味のチキンハンバーガーを食した。

 食後の暇つぶしに、広場前の新華書店に入ってみた。店内では旅行ガイドブックのフェアの最中で、所狭しと国内のガイドブックや写真集、旅行記が並べられていた。手にとって見ると、どの本もチベットをプッシュしていた。ガイドブックのほとんどは、第1章をチベットに当てている。中国国内の旅行熱エネルギーの捌け口がチベットとなっている現状がよく分かった。

 ちなみに、晩御飯は、大通り沿いの安食堂(しかし美味い!)で麻婆豆腐に坦々麺(汁なし)。