二日目:康定

 僕は、パンダには目もくれずに、西部に向かうことにした。

 8:00の康定(KanDing)行きのバス(115元)は、チケットに印刷された乗り場とは違う所から出発した。とは言え、(7年前にはなかなかお目にかかれなかった)立派なバスだ。
 このルート(昔は「茶馬古道」とも呼ばれた)は、漢人族とチベット族を隔てる二郎山をトンネルが貫通するまではバスで二日がかりの行程だったらしいが、今や成都から康定までは、7時間の道のりだ(近々康定に空港もできるらしい)。
 中国でバスに乗るのは久しぶりだが、何より驚かされたのは、車内にゴミ箱が備え付けられ、そこに人民の皆さんがゴミを律儀に捨てていたこと。ゴミだけでなく、子供にウ●コまでさせていたところは人民の皆さんらしいところだが。
 とは言え、道中の荒々しい山岳の風景の素晴らしさや、昼食を取った食堂の料理(麻辣風味、8元)の美味さを前にすれば、そんなことは些細なことだ。

 15:30、バスは大したトラブルもなく康定に到着した。
 康定の街は、甘孜(GanZi)蔵族自治州の中心地にして、このエリアへの玄関口に当たる。川沿いにマーケットやホテル、商店、劇場や政府機関が立ち並んでいる。歩き回るには手ごろな大きさで、歩いている人間もチベタンがほとんどだが、残念ながら特にこれといった面白みはない。
 ちなみに、宿は、バスターミナル前を出たところで群がってきた客引きに案内された東方紅飯店。ターミナル前に立ち並ぶ新しい小ホテル群の中にある一つだ。ここのところ増えている移住漢人の経営によるものだか、値段のわりに設備は悪くない(シングル50元)。そして何より、翌日の出発が朝早い場合にはこのロケーションは嬉しい。

 でっかい劇場前の人民広場で、揚げジャガイモ(麻辣風味、5角)を頬張っていると、いよいよチベットに来たなという感じになってきた。