一日目:成都

 ここのところ、やれ<新婚旅行>だの、<親孝行旅行>だのと、浮かれた旅を繰り返してきたのだが、どうにもこうにも押さえられない衝動が再び訪れた。

 ということで、新妻を残して四川へと旅立った。目指すは、四川省内のチベット民族居住区の理塘(LiTang)。7年前、チベットを旅した時に出会った旅行者が、口を揃えてこの小さな街とここを闊歩するチベタンの素晴らしさを伝えてくれた。僕にとっては、「いつか訪れなければ」と思っていた念願の場所の一つだ。

 予想外に小型で、えらく揺れる中国国際航空全日空共同運航便でもって、北京経由で成都へ。成都は初めてだが、7年ぶりの中国だ。街には高層ビルが立ち並び、目抜き通りは地下鉄工事の真っ最中。聞きしに勝るスピードでこの国も変っているようだ。
 空港リムジンバスを降りて、交通賓館へ。バックパッカーには有名な宿だが、四川西部へのバスはこのホテルの裏のターミナルから発着するので、何かと便利なのだ。おまけに、3人部屋で1ベッドあたり40元と、値段もまずまずだ。
客は、ほとんどが沿岸部から来たと思しき小金を持った中国人の若者で、その重装備から察するに、みんな西部を目指すらしい。もしかしたら、この中国人旅行者の劇的な増加こそが、この国の大きな変化を示す分かりやすい尺度の一つかもしれない。

 久しぶりの中国語もまだしっくり来ないが、とにもかくにも、再び<旅>が始まった。