SL銀河の宮沢賢治文庫
汽車の乗客のために図書室を設けよう…と最初に言ったのは和田万吉で、そのことをここでも紹介したものの、それはあくまでも当時のことで、21世紀のこの時代にそぐうものではないと考えていた。
けれども、先日、岩手県でSL銀河に乗ったときに、こういう展開ならアリだな…と思ったので、備忘のためにここにも書いておく。
SL銀河は花巻と釜石の間を結ぶ観光用のSLで、遠野に長めに停車するなどゆっくり5時間近くをかけて走っている。
5時間というと結構な時間だが、風光明媚な車窓だけでなく、停車駅での「おもてなし」や、車内でのプラネタリウムや宮沢賢治のコスプレ写真撮影、スタッフによるボイラー焚きの解説など、アトラクションがふんだんに盛り込まれていて時間の長さを感じさせない*1。
そんなアトラクション?の一つに、地元出身の有名な作家であり、沿線には文学館も建てられている宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」の自筆原稿や、本や雑誌などを並べた書棚(セレクションは宮澤文学の研究者でもあるロジャー・パルバース氏による)もあるのだ。
小さいころに宮澤賢治の書いたものを読んだり、教科書でその名前を目にしたり…という人は多いだろうが、普段、改めてその著作を読む…という人はいないだろう。かくいう自分も含めて。
けれども、そのゆかりの土地を走る汽車の中の、有り余るほどの時間のうちのほんの少しの間でも、その著作を手に取って眺める…というのは、とても贅沢な時間のつかい方ではないだろうか*2。
- 「『観光文化』243号「特集:観光と図書館~地域の観光に図書館はどう寄与できるか~」」(2019/10/15)
- 「再びオランダへ」(2019/3/29)
- 「汽車中の図書室 簡単なる旅中の伴侶」(2017/5/26)
- 和田万吉の「旅客の為めに図書館」(2012/8/15)
- 『図書館雑誌』2012年8月号に「マレビト・サービス」を執筆(2012/8/14)
- マレビトサービス#2:西牟田靖編(2011/5/15)
- 同時多発的お花見ストリーム/マレビトサービス#1:石田ゆうすけ編(2011/4/7)
- 地域と観光に関する情報サービス研究会第三回研究会(2011/3/25)
- 地域と観光に関する情報サービス研究会第二回研究会(2011/2/22)
- 地域と観光に関する情報サービス研究会第一回研究会(2011/1/23)
- 地域と観光に関する情報サービス研究会(マレビトの会)発足(2011/1/11)
- 図書館と観光:その融合がもたらすもの(2010/12/27)
- Airport Library @スキポール空港(2010/9/8)
- 鼎談「まちづくり・観光・図書館」(2010/7/5)
- 観光と図書館の融合の可能性についての考察(2010/5/1)
- アーバンツーリズムと図書館(2009/3/24)
- Tokyo's Tokyo(2009/3/4)
- 旅の図書館(2009/2/12)
- 南益行の「観光図書館論(2009/1/27)
- 旅人のための図書館を夢想する(2008/12/27)
- 蛇足 「八重山図書館考」(2008/10/10)