クアラ・トレンガヌ(2)

 次の日、朝に弱い2人を残して9:00に出発して、この地方で一番美しいモスクと評判のフローティング・モスクに入ってみた。バスで30分程、海岸沿いに行った所にあるこのモスクは綺麗に整備されていて、公園みたいになっていた。モスクは初めてだったので、最初は物珍しくてウロウロしていたが、肝腎の礼拝の間には入れてもらえなかったので、2時間もしないうちに飽きて、バスに飛び乗った。

 この日の午後は、僕にしては珍しく、比較的精力的に色々な所に行った。もっともすぐ疲れて喫茶店でテータレを飲んで休憩したが。街は、祭りの次の日ということもあってか、昨日の人出からは想像できない程、人気は少なかった。マーケットも閉まっていた(3/6は日曜日。イスラム安息日は金曜日だから普通はやっている筈)。この街の、どこか気だるさを持った空気の昼下がりは妙に心地よかった。
 涼しくなってきた4:00頃、この街で一番見晴らしの良い場所というBkt.PUTERI(Bktはマレー語で丘)に登ってみた。そこのベンチで僕は手紙を書きながら涼むことができた。吹き上げてくる潮風が良かった。と、突然、丘の下にあるモスクからコーランをうたう声がきこえてきた。夕暮れ独特の、あのダレ具合の中でコーランは、子守唄のように僕の耳にひびいてきた。

 5:00、また3人で昨夜と同じコースを巡った。豚マンの中の、アンと卵の絶妙なハーモニー、いたる所で売っているハンバーガー、重たい物の後には最高のサトウキビジュース。そしてココナッツミルク。マレーシアにはまずい料理なんてないんではないかと思えてくる。街中の明かりは昨夜のままだった。街中遊園地、というKの言葉がピッタリだった。ただ、ビーチだけは違った。ゴミが散乱し、人気が無く、2、3軒残った屋台が、祭りの後の寂しさを演出していた。
 結局、G.H.に戻ったのは12:00前だった。僕はまだ眠たくなかったので、同じく眠るつもりのなかったKと、屋上のテラスで2時間程話し込んだ。Kとはこの旅で、一番にウマが合った。考えることも趣味も(釣りを除いては)、近いものを持っていた。「俺は明日、カパス島へ行くことにした。釣りもできそうやし」「じゃあ、俺も行ってみようかな」話しは決まった。「じゃあ9:00出発な」不思議なことに、この時は「もう少しコイツと行動してみたい」と思っていたのだ。