インドとウズべキスタンの間

カラーン・ミナレットの周りで、インドの映画だかミュージックビデオだかの撮影をやっていた。インド料理屋でよく流れてる、男優と女優が場所を変えながら絡み、踊るあれである。

オンボロと立派な2台のロケバス。ADらしいインド人が声をかけると、前者からはバックダンサーと思しきビキニ姿のロシア系の女の子たちが、後者からは主演らしいインド人の女優と男優(髭)が出てきた。バックダンサーの子たちは朝からの撮影のためか、上半身は日に焼けて真っ赤。一方、主演の2人はサングラスにおつきの差し出す日傘で完全武装。この待遇格差は致し方ないものなのだが、どうも違和感がある。
彼らはカラーン・ミナレットの眺めが素晴らしいレストランのデッキやら、下の広場やらで、念入りにリハーサルを繰り返し、そして何度も撮り直していた。見たところ、バックダンサーの子たちの覚えっぷりがまちまちだったのと、肝心の男優にちょっとリズム感がないために何度もNGになっているのだが。(当たり前だが)いつも流しているインド映画にもこんな涙ぐましい撮影現場があったのかと思うと、刮目せざるを得ない。
ともあれ、昨今のインドの目覚ましい経済成長を感じさせる話である。

帰国後に、行きつけのインド料理屋さんで店のインド人従業員や常連のインド人に写真を見せてみた。彼らが一様に羨ましい旨を表明したり、この女優さんは見たことない=たぶん有名ではないという見解を述べたりすることは想定内だったのだが、一つ想定外のコメントが返ってきた。
ウズベキスタンもインドの一部みたいなもんだしね」
確かに、インドのムガール(モンゴル)帝国を興したのは、中央アジアから南下したティムール帝国の末裔たちなのだが、あまりにインド大国主義丸出しのコメントに私は不意を突かれてしまった。