小浜島(2/6)
朝は、暗いうちに目が覚めた。朝が早いのは、旅先ではいつものことではあるのだが、朝食前までに少しジョギング、即ち「旅ラン」でもと思っていたからだ。今回は、そのために妻のブーイングにもひるまず、ジョギング用のシューズとウェアも持参している。
が、しかし。6:30になっても7:00になっても、外はいっこうに明るくならない。考えてみれば、いかに暖かくとも所詮は日本の2月。しかも、東京より遥か西のこの地では、実際の体感時間は-30分くらいはありそうだ。さすがに街灯も土地勘もない島を、暗いうちから一人走るのは無理だしどうしたものやら…と悶々としているうちに、家族が起きて、予定していた朝食の時間8:00になってしまった。これではジョギングどころではない。
気を取り直して、家族を連れて朝食に向かった。レストランのあるレセプション棟までは300メートルほどだが、今回の滞在プランにはカートがついているので、カートを運転する。娘が「パパスゴイ!」とか言ってくれるので、ついつい乗ってしまうのだが、それはともかく、意気揚々とカートで乗り付けて、ビュッフェの朝食。子どもの好きな物を適量ずつ取れるので楽だ。5日も同じメニューだとだんだん飽きてくるのは事実なのだが、それはまだ先の話。初日は、親子ともにハイテンションのまま朝食を終えた。
朝食を終えると、いきなりやることがない。天気も雨上がりの曇り空ですっきりしない。こんな時こそジョギングである。娘のお守りを妻に託して、ジョギング用のウェアとシューズを身に着けた。この日は、ここ暫くまともにジョギングをしていないというコンディションと、食事後1時間しか経っていないという状況を勘案して、島の中心にある集落までを往復するだけにした。これだと、およそ3〜4kmで、途中歩いたりして30分ほどのジョギング。島は中心部に向けて緩やかな傾斜になっていて、これは意外にきつい。あと、サトウキビ畑を抜ける一本道には風を遮るものが一切ないので、全くの吹きさらしになってしまうのも堪えた。とは言え、ほとんど見知らぬ土地を走るのは新鮮で、なんとも言えない爽やかな気持ちになれる。
戻ってシャワーを浴びてしばらくすると、ぼちぼちと昼ごはんのことを考える時間になってきた。大人だけだと「まぁいいか」と流すことも可能だが、子どもと一緒だとそうはいかない。まずは食べに行かねばならない。旅に出て余計なことをそぎ落としてみると、子育てとは、子どもをいかに食べさせるか、いかに寝かせるか、に尽きるということがよく分かる。帰宅してから気づいたのだが、撮った写真のほとんどが食事の写真だったというのも宜なるかなといったところか。
ともあれ、昼食である。この日は、歩いて集落まで行ってみることにした。ゆっくり歩いても30〜40分くらいだろうから、(レセプションの人にはちょっと驚かれたが)散歩にはちょうどいい。そして、集落の中の、ちょっとこじゃれたカフェでピラフとスパゲッティの昼食、そしてオリオンの生ビール。大人にはこれが堪らない。食後は、集落をブラブラして、某ドラマのロケ地となった民家や、私が7年前に泊まった民宿を冷やかしたりしながら、ゆるゆるとホテルに戻った。
ホテルに戻って、子どもを昼寝させたり洗濯したりしていると、無性に本が読みたくなった。バルコニーの椅子にふんぞり返って、南風に吹かれながら読書。そしてオリオンの缶ビール。これも堪らない。しかし、持ってきた本はいかにも無粋だった。そこで、ロビーにあるライブラリーコーナー〜ここには沖縄や八重山に関する本が40〜50冊ほど置かれていて、宿泊客は自由に借り出すことができる〜から池上良一の『テンペスト』の上巻を借りてきた。琉球を舞台にした時代小説なら、雰囲気、分量ともに申し分ない。
- 作者: 池上永一
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/08/28
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しかし、である。宴は長く続かなかった。理由は簡単。娘が飽きたからである。家族で賑やかに美味いものを食べていれば、多少はのんびりできるかな〜と淡い期待を抱いていたが、甘かった。1時間あまりで自分の食事を終えると、「かえろかえろ」の猛烈アピールである。正直、この時ばかりは「接待」の二文字を忘れて「勘弁してくれよ〜」と言いかけたが、それはできない。しぶしぶ、居酒屋のお姉さんに車をお願いした。まだ19時半なのだが…。
そんなこんなでホテルに戻って風呂に入って暫くすると、娘は寝てしまった。そして大人は、再びオリオンの缶ビールと読書である。