ON THE ROAD

#85

2008.5 Bukhara, Uzubekistan. 現代において、もはや「旅」はけっして「差異」の知見を生みだすことはない。いまや、「旅」は「差異」の知見を前提としてしか行われえない。 今福龍太『クレオール主義』 大きな地図で見る クレオール主義 (ちくま学芸文庫)作…

#84

2009.1 Osaka, Japan. 観光客の行動が示しているように、彼らはジャングルの奥地でなにか得体の知れない未知のものに出逢うことを期待してやってきたのではけっしてない。その土地の地勢も、風土も、人間たちのくらしも、あらゆるメディアの情報とともに、す…

#83

2009.1 Harajuku, Japan. 旅することは、だから場所を越えて一つの認識へたどりつくことだった。そしてその認識の根幹には、場所の「差異」に身をさらすという行為そのものによって自己を他者から差異化するという力の作用が潜んでいた。 今福龍太『クレオー…

#82

2009.1 Kumamoto, Japan. 「土地」という名で呼ばれる「場所」はたしかにそこにある。土地は人間によっては具体的に経験されるためにわたしたちを待っている。 今福龍太『クレオール主義』 大きな地図で見る クレオール主義 (ちくま学芸文庫)作者: 今福龍太…

#81

2009.2 Harajuku, Japan. 旅行のあとで残っているのはもはやひどく混乱したイメージだけだ。 ポール・ニザン『アデン、アラビア』 大きな地図で見る アデン、アラビア/名誉の戦場 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-10)作者: ジャンルオー,ポールニザン,北…

#80

2001.11 Rikaze, Tibet. 旅の偶然はきみたちを風景のなかにある人間の群れの秩序と無秩序へとつねに連れ戻すことだろう。そして、きみたちは裁き、愛し、嫌悪し、譲歩し、抵抗することを余儀なくされることになるだろう。人間が待っているのは人間だし、それ…

#79

2006.2 Leh, Ladakh. 旅にまっとうなものはひとつしかない。それは、人間に向かって進んでいくものだ。それがオデュッセウスの旅なのだ。僕が無駄に古典の勉強をしていたのでなかったのなら、そんなことはわかっていて当然だったのに。そしてこの旅はもちろ…

#78

2001.12 Varanasi, India. 土地と顔が持っていた真新しさが失われ、さまざまな色あいにもあたり前になり、風景が色あせたものになっていけば、アデンを理解しようとすることはもう不可能ではない。 ポール・ニザン『アデン、アラビア』 大きな地図で見る ア…

#77

2007.10 Chengdu, China. 旅は自分の自由について考え、自由について語る。あたかも、彼よりも小者が彼に吹きこんだ感情、つまり彼のことを自由だと心から言う人たちの羨望とか敵意にだまされているかのように。でも、クラゲは自分が自由だと思っているし、…

#76

2007.6 Ubud, Bali. 旅行者のなかでもすぐれて洞察力のある人たちは、最初の寄港地で旅行というものの真実に気がつく。シンガポールに、マルキーズ諸島に向けて出発した彼らは、その真実をアメール湖群やスエズのさびれた広場を見る前に発見するのだ。頑固さ…

#75

2004.3 Negombo, Sri Lanka. 旅行者の自由など、人間性を形づくるものをひとつまたひとつと麻痺させていき、そんな切断作業を知恵と呼ぶ賢者たちの自由と変わりはしない。 ポール・ニザン『アデン、アラビア』 大きな地図で見る アデン、アラビア/名誉の戦場…

#74

2008.5 Bukhara, Uzubekistan. 「とどまる」ためには、自分の住まいと恥じずに言えるためには、真の力を愛さなくてはいけない。本当の旅行者、本当の逃亡者というものは、だから、人間の無力さのとるに足りない証人なのだ。 ポール・ニザン『アデン、アラビ…

#73

2004.3 Nuwara Eliya, Sri Lanka. 旅行者は、同じひとつの部屋にずっと住むことのできる人々の敵だということはもちろん誰もが知っている。人間たちは旅行者に対しては水を通さない球体のようにぴっちり閉じられている。旅行者は偶然から親切にしてもらえる…

#72

2006.12 Yangon, Burma. 旅行者の前では窓という窓が閉ざされている。旅行者ってやつは行く先々で、出発した方がいい、旅行に行った方がいいとひとに勧める義務があると思っているからだ。 ポール・ニザン『アデン、アラビア』 大きな地図で見る アデン、ア…

#71

2006.3 Delhi, India. 旅行者はどうしても、家を見ても、そこに住んで老いてゆく人たちは見ないで、単なる建築的な好奇心から、いろんな色をした壁だけを見てしまう。 ポール・ニザン『アデン、アラビア』 大きな地図で見る アデン、アラビア/名誉の戦場 (池…

#70

2001.11 Mount Everest Base Camp, Tibet. 着いた。得意がるほどのことではない。 ポール・ニザン『アデン、アラビア』 大きな地図で見る アデン、アラビア/名誉の戦場 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-10)作者: ジャンルオー,ポールニザン,北代美和子,小…

#69

2006.12 Bagan, Burma. 誰もがそうだったように、こうした旅行連中もまた、組織的な力に鼻先を引き回されながら、自分の情熱、行動、言葉、仕事、愛についてなにひとつ理解できないような歳月を生きていたのだ。 ポール・ニザン『アデン、アラビア』 大きな…

#68

2007.6 Mt.Batur, Bali. 革命を待ちながら、ユートピアは旅をする。 ポール・ニザン『アデン、アラビア』 大きな地図で見る アデン、アラビア/名誉の戦場 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-10)作者: ジャンルオー,ポールニザン,北代美和子,小野正嗣出版社/…

#67

2001.3 Mekong River, Laos. 旅って言葉にまだどんな意味があったって? このパンドラの箱には何が入っていたかって? 自由、無私無欲、冒険、充実感。多くの不幸な人の手には届かず、カトリックの青年たちにとっての女性がそうであるように夢のなかで手に入…

#66

2001.12 Kathmandu, Nepal. 逃げ道ならいくらでもあった。どこにも行き着かないドアならいくらでも。 ポール・ニザン『アデン、アラビア』 大きな地図で見る アデン、アラビア/名誉の戦場 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-10)作者: ジャンルオー,ポールニ…

#65

2004.3 Colombo, Sri Lanka. 誰もが自分のやり方で脱出を確実にしたいと思うものなのだ。 ポール・ニザン『アデン、アラビア』 大きな地図で見る アデン、アラビア/名誉の戦場 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-10)作者: ジャンルオー,ポールニザン,北代美…

#64

1999.2 Chiang Saen, Thailand. 僕は二十歳だった。それが人生でもっとも美しいときだなんて誰にも言わせない。 ポール・ニザン『アデン、アラビア』 大きな地図で見る アデン、アラビア/名誉の戦場 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-10)作者: ジャンルオ…

#63

2005.8 Tomigaya, Japan. これでいいのさ。気楽に考えろ。すべてはうまくいってる。物事を深刻に考えすぎるな。今のままでもう充分大変なんだ。きみがいつも言ってたように頭の中の観念にはまりすぎなくてもね。 ジャック・ケルアック『ビッグ・サーの夏−最…

#62

2008.4 Asagaya, Japan. 寝返りをうとうとすると世界もいっしょに丸ごと寝返ってくる。でも反対を向いたところで何もいいことなんてないのだ。ここからはぬけ出せないんだ。 ジャック・ケルアック『ビッグ・サーの夏−最後の路上』 大きな地図で見る ビッグ・…

#61

2008.5 Tashkent, Uzubekistan. ぼくはただの馬鹿なよそ者で、自分にとって大切なことを何もせずに、他のよそ者たちと間抜けなことをしてるだけということなのだろう。いつだって西海岸にはちょっと顔を見せるだけの「お客様」で、そこで誰かの人生と真剣に…

#60

2001.3 Champasak, Laos. いいことならなんでもすべてオープンだなんて、神様と肩をならべた造物主気取りね。でもきれいごとを言いながら考えてるのは裏腹なことなの。そんな調子であなただって気分さわやかなんでしょ。 ジャック・ケルアック『ビッグ・サー…

#59

2001.11 Gyantze, Tibet. 道のほうは動きやしない。動いていくのは俺たちなんだ。 ジャック・ケルアック『ビッグ・サーの夏−最後の路上』 大きな地図で見る ビッグ・サーの夏―最後の路上作者: ジャックケルアック,Jack Kerouac,渡辺洋,中上哲夫出版社/メーカ…

#58

2006.2 Leh, Ladakh. 人間はせわしない小さな生き物、すてきな小さな生き物さ。あれやこれやと考えて、糞にもなりゃしない。 ジャック・ケルアック『ビッグ・サーの夏−最後の路上』 大きな地図で見る ビッグ・サーの夏―最後の路上作者: ジャックケルアック,J…

#57

2001.12 Kolkata, India. ぼくたちは人生に囲まれながら、人生を理解することはないだろう。だから何もかもひとまとめにしてスコッチといっしょにらっぱ飲みにして、空になったら車から駆け降りてもう一本買うというわけだ。 ジャック・ケルアック『ビッグ・…

#56

2006.5 Shibamata, Japan. ぼくは馬鹿でかいみじめなリュックサックを背負って道路に立っている。巨大な黒い崖の下の浜辺に幾夜もすわっていたから、おそらくひきつった表情を浮かべていることだろう。行楽客たちは彼らの夢見る休暇とまったく正反対なものを…