勉強会@中央線RT2018〜如月を開催
10年目最後の企画でした。
(49) 2018/2/5 高円寺HACO 李明喜(ACADEMIC RESOURCE GUIDE)「図書館におけるデザインとは何か?何ができるのか」
李さんとは、2009年のトークイベント「図書館は視えなくなるか?」で初めてお会いしたと記憶しているので−極めて刺激的なイベントだったのでよく覚えている−、9年という時間の流れのはやさに眩暈がしそうです。私は相変わらずですが、一方の李さんは紆余曲折の末、気付けばARGに参画して「同じ業界の人」になっていたという…。李さんは以前、いずれ作ってみたいものとして「図書館」を挙げていたので、"なるようになった"ということなのかもしれませんが。
さて、今回、李さんには最近担当された『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』 第20号の総特集「図書館のデザイン、公共のデザイン」を下敷きに語っていただきました(李さんのテクストの一部は『マガジン航』でも公開されています。)。
李さんが現在、各地で取り組んでいるプロジェクト等の具体的な事例にそくした構成にしてもよかったかなといは思いますが、「デザインとは何か」という普段は面と向かって突っ込んでいかない「そもそも論」に、いい大人が10人以上も集まってそれぞれの言葉を交わす…というのは貴重な時間だったと感じています。
話が盛り上がったことの要因の一つに、座席の配置もあると考えています。上の写真にあるとおり、正方形になるように長机を並べ、参加者はそこを囲むように座ってもらいました。この配置だと、少し前のテレビ番組「真剣10代しゃべり場」のように参加者が全員の顔を見ながら話せることに、昨年8月の前回に気付いたので、今回も踏襲しました。
さて、次回からいよいよ10周年に突入です。
- 勉強会@中央線RT2017〜葉月(2017/8/10) (48)
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- 勉強会@中央線RT2014(2014/3/26) (40)
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- 勉強会@中央線NEO2010(2010/11/10) (22)-(26)
- 勉強会@中央線2008-2009(2009/12/10) (1)-(21)
- 「ガード下の「ゆるく尖った場」:10年目の勉強会@中央線」(2017/2/25)
- 勉強会@中央線NEOのライフサイクル(2013/3/28)
- 勉強会@中央線NEOのレシピ(2011/11/16)
- 内と外(2009/11/13)
「柳本浩市コレクションに見るデザインアーカイブの可能性」にコメント協力
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「柳本さんが残した資料について、また生前の柳本さん独自のアーカイブ論について、コメントをいただきたい」ということだったので、6月の下旬、<取材>という名目の下、1時間ほど話をさせてもらいました。前に書いたエントリーの内容や、最近読んだ『社会変容と民間アーカイブズ―地域の持続へ向けて』を下敷きにしながら、思う存分コメントしました。当然ながら、記事ではそのごくごく一部しか採られていないので、ボツになったコメントはいずれ何らかのカタチにできればなと思います。
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勉強会@中央線RT2017〜葉月を開催
2010年以来、2度目の登壇となる氏原さんからは、事前に次のような概要をもらっていました。
〈最小公倍数〉というよく分からない言葉は、最近のプロジェクトを経て、過去15年ぐらいの様々な体験をふりかえって見つけた、コミュニティデザインの仮説となるキーワードです。そんなキーワードについて、最近の3つのプロジェクトの話をしながら、その仮説を紹介したいと思っています。
被災地から都心のベッドタウン、自動車会社の城下町までいろいろですが、それぞれのまちでコミュニティで/と仕掛けてきたことを紹介しようと思います。
公共空間や公共サービスにおいて志向される、「だれもが」という主語。その主語となる最大多数のユーザが共存できることを目指した結果、実現されるものを氏原さんは「〈最大公約数〉の公共性」と呼びます。「あらゆるユーザを想定すること自体は悪いことではないものの、最大限の人々が共存しうる条件を追い求めるあまり、みんなのためのようであって、誰のためでもないものになってしまうことが多いのではないか」という問いが、今回の話の出発点でした。
最初に紹介されたのは、氏原さんがワークショップのファシリテーターとして参画した太田市立美術館・図書館の基本設計ワークショップ。設計を担当した平田晃久さんが
この街にも日本全国に広がるいわゆる「郊外化」の問題が幅を利かせている。車中心の生活が、駅前のにぎわいを奪い、じわじわと街の持っている生命力が奪われていくような負のサイクルが進行していて、切実な危機感が人々に共有されている。歩いて楽しい街を何とかして取り戻したい、というさまざまな立場を超えた共通の思い。この建築は、そういう強い思いの坩堝(るつぼ)から生まれてくるものではないか、と感じた。
設計過程をできるだけ市民との議論の場に投げ出して、半ば混沌とした設計プロセスで案の方向性を析出させたいと思ったのには、そういう背景があった。設計者としての責任を放棄するわけではない。むしろ逆に、自分たちの考えを投げ出した多数性の場のなかで、よりよいと判断できるものをどこまで浮かび上がらせることができるか、ラディカルに試そうとしたのである。
と書くように*1、プロポーザルで示された設計プランをベースにしつつも、公募で集まった市民が参加するワークショップで、ゾーニングやスペースの区切り方などの設計要素をくみ上げていくという、一風変わった手法―これが成立するためには、色々な前提条件が必要そうですが―で基本設計が進められていったそうです。
氏原さんが紹介した、毎回アジェンダをきっちり設定したりするなどして参加者から多様な意見が出やすいようにする仕込みや、出揃った意見から様々な言葉や要素をくみ出して設計に落とし込んでいく捌き方といった、プロフェッショナルとしての経験に裏打ちされた緻密な準備や仕切りも参考になるものでした。しかしより興味深かったのは、ワークショップ参加者という顔の見える個人から出される「私」をファシリテーターが汲み取り、そして「公」につなげていくこの実践を氏原さんが、「限られた人でもいいから巻き込んでいける〈最小公倍数〉を探っていく手法」として位置づけていたことです(そして、比較的多くの人と共有できる〈最小公倍数〉は地域経済、即ちカネだよね…と2や3の話へとつながっていきました)。
この話を聞きながら私は、少し前に読んだ東島誠さんの『<つながり>の精神史』の「日本史上の「公私」は、相対的な「大−小」、含み含まれる関係であって、概念として対立していないところに特色がある。」という一節を思い出していました*2。東島さんのこの指摘を是とするならば、「私」を「公」につなげていくというこのアプローチは、きわめて理に適ったものだということになります。そして、そのプロセスにこそ(参加者の一人であるHisammitzuMizushimatさんの言葉を借りれば)「「公共」なる概念の本質が透けて見える」のかもしれません。
公共施設と、それをめぐる「市民」と「プロフェッショナル」による意思決定過程を追いかけると、「公共」なる概念の本質が透けて見えるという話。ああ、面白かった。
— HisammitzuMizushimat (@sammyhm) 2017年8月10日
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スクリーン/プロジェクタは使用しないということだったので、いつもは「コ」の字に配置する長机を真ん中に寄せてつくった大きな机の真ん中に参考となる文献を置き、それを囲むように11人分の座席を配置しました。氏原さんは「誰の目を見て話せばよいか分からなかった」と帰り道に苦笑していましたが、この座組みが濃密な議論を演出する一つの要素となった気がしています。氏原さんからの話が一通り終わった後、3つくらいのカタマリに分かれての議論が同時多発的に起こったのも、この座組みならではのことだと思います。
<7/25追記>
当日のお話の一部が『カレントアウェアネス』に掲載されています。
氏原茂将. 市民と〈設計〉した公共空間―太田市美術館・図書館における基本設計ワークショップ―. カレントアウェアネス. 2018, (336), CA1924, p. 2-5.
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- 内と外(2009/11/13)
*1:http://10plus1.jp/monthly/2017/02/issue-02.php
*2:本書では、「私」は"private"ではなく"partial"、「公」は"public"ではなく"impartial"という訳をあてています。
#145
汽車が駅から動き出した時位、それまでのことを一切後にして来たという気分がすることはない。
吉田健一「忙中の閑」
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#144
旅も、本も、何れもそれだけで幾らでも未来の夢が描けるものである。併しそれだから、止めて置く。凡ては老後の楽みに取って置こうと思うのである。
吉田健一「老後」
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#143
碌に旅行をしたことがないものだから、旅情などということを持ち出して、自分が生れる前の昔を恋しがったりすることになる。
吉田健一「超特急」
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