図書館と観光:その融合がもたらすもの
『観光と図書館の融合の可能性についての考察』(10/3/25、北海道大学修士論文:観光学)を執筆した松本秀人さんが、観光×図書館ネタで新たに論点/現状整理レポートを書かれたので、ここでもご紹介。
松本秀人. 図書館と観光:その融合がもたらすもの. カレントアウェアネス. 2010, (306), CA1729, p. 2-5.
ポイントになるのかなと思ったところを抜粋してみる。
- 図書館が「観光に関連した活動を行うことにより、地域の活性化に貢献する」という観点からとらえてみると、(1)新たなサービスの創出と利用者の開拓、(2)情報の受発信や交流を通しての地域貢献、という点について効果が期待できる。
- 図書館が観光を意識した活動を行うことによって、観光者が「訪問地の図書館に行けば地域の情報が得られる。地域文化を理解できる」と認識するようになり、地域の側も「図書館を通じて観光者に情報を発信しよう。観光者が求めているものを探っていこう」と考えることで、図書館が観光者および地域による受発信の媒介役となる点が重要。
- 地域情報の宝庫である地域資料は、観光者にとって貴重な情報源であるし、地域住民が観光振興を進める際の手がかりにもなるし、レファレンスサービスは、観光者の地域に対する疑問を解決したり、地域情報と観光者を結びつける大切な役割をはたす。また、地域文化に関するイベントや企画展は、地域住民のみならず、観光者の関心を集めたり、そこから地域内外の交流をもたらす効果を持っている。
なお、このレポートで事例として挙げられているのは、地域情報ポータルとして「リサーチ・エンジン on 奈良」を運営する奈良県立図書情報館、交換展示を積極的に行っている高知県立図書館、「コンシェルジュ」を置いて地域案内も行っている東京都の千代田区立千代田図書館、観光案内所的な役割を担おうとしている群馬県の草津町立図書館といったところ。個人的には、奈良県や石垣市で行われている観光客向けの貸出サービスにも触れて欲しかったところだが、どれも興味深い。
ここで何度か書いているが、個人的には観光×図書館は「自治体外部から訪れた"マレビト"へのサービス」として考えたいと思っている。ちょっと話はずれるが、少し前に読んだ『アジア未知動物紀行』という本で、図書館員目線で興味深い記述があった。著者が奄美大島の未知動物「ケンモン」について調査を行う際に、取っ掛かりとなる情報を町立図書館の司書さんから紹介された資料から得て調査を進めている。この情報が非常に有効だったということで、この司書さんは著者から非常な感謝をされている(非常に司書冥利に尽きる話!)のだが、"マレビト"サービスとして典型的な例ではないだろうか(『図書館を使い倒す!』は有名過ぎるので、ここでは紹介しない)。
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