大岡育造『欧米管見』

大岡育造編 『欧米管見』 東京, 大岡育造, 明治34(1901)年, 188p.

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大岡育造(1856-1928)は、代言人(弁護士の前身)から政治家(政友会)に転身し、衆議院議長まで務めた人物である。
本書は、緒言に「本編はハ唯其見聞スル所ニ随テ放言漫語ヲ試ミタルに過ギズ」とあるように、1899年から1900年にかけて赴いた欧米視察で見聞した事柄を自らが社長を務めた新聞社(中央新聞)の記者に話した内容をまとめたもので、くだけた文章で欧米の議会事情や戦争体制といった話から、レスリングなどの話まで取り上げる硬軟織り交ぜた内容になっている。
ここでは、アメリカの図書館事情を紹介した「西洋の図書館」の一節に注目したい。大岡は、図書館を博物館と並んで「学校外に於ける人民に智識を与へる大切の場所である。」と評した上で、ワシントンとボストンの図書館を取り上げている。このワシントンの図書館というのは、米国議会図書館を指しているのだが、この時代の議会図書館を議員サービスの点から紹介している文章はそう多くないので紹介しておきたい。

華盛頓の図書館は建築でも何でも洪大である。議院と地下の連絡が付いて居ッて、需める処の書籍通信の方法があッて、通信すると其書籍を取りに行かなくとも其本が自ら議会に来る様になッて居る。

短い文章だが、この前年まで衆議院議員を務めていた大岡が当時の衆議院貴族院図書館とは比べ物にならないそのサービスに驚嘆していることが良くわかる。折しも、米国議会図書館はパトナム新館長(在任1899-1939)の下、蔵書の増加・サービスの開発など、目覚しい発展を遂げようとしていたときだった。