野口米次郎『帰朝の記』

野口米次郎 『帰朝の記』 東京, 春陽堂, 明治37(1904)年, 140p.

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彫刻家イサム・ノグチの父親としても知られる詩人の野口米次郎(1875-1947)。明治26年に19歳で渡米後、アメリカ・イギリスで詩人としての地位を確立した明治37年、11年ぶりに日本に帰国した。帰国直後に、両親に捧げる形で上梓されたのが本書である。
ニューヨーク〜サンフランシスコ〜横浜という帰国の際の日記と、帰国後に訪れた鎌倉・津島(郷里)・奈良・京都などの国内の旅行記の二部構成となっていて、詩人らしく随所にアメリカの詩を引用しているのが目につく。
帰国後、藤沢の寺で住職をしていた兄と一緒に大陸とは趣の違った鎌倉の風景を楽しんだり、津島では久々に対面した父親からは一見して息子と認識してもらえなかったりと、郷愁と違和感の入り混じったちぐはぐな筆致が印象的。なお、イギリス・アメリカの滞在記として『英米の十三年』(春陽堂, 明治38年)も出されているが、こちらは改めて紹介したい。