6日目:プーケット

 この日、我々は、新しいフォーメーションを組んだ。これまで基本的に5人そろっての行動だったのだが、旅に慣れてきたということもあって、2-2-1のワントップ型システムを採用したのだ。
 今回は、ケンタロウと私が後ろを固め、ヒロヤとヒサシが中盤を構成し、ワントップにシゲオを据えることになった。
 これは、これまでの旅に欠けていた「ビーチにいる見知らぬ女子(日本人)の方々に小粋で爽やかなトークを申し込む」という目的を達成するためのフォーメーションである。ちなみに、この後もワントップ型システムをベースにしたフォーメーションをたびたび組むことになったのだが、シゲオ不動のワントップとなったことは、ここまでお読みいただいている(奇特な)読者諸兄におかれては容易に想像がつくところだと思う。
 こうして我々のビーチ・ゲームの開始のホイッスルが、バトン・ビーチに鳴り響いたのであった。

 ここまで書くと、話の展開上、詳細な一部始終を書かくのが普通だと思う。私もそうしたい。しかし、過去の大して面白くない出来事をほじくり返して、現在の人間関係に少なからず悪影響を及ぼすようなことは避けたいという一社会人・一家庭人としての私の気持ちも、分かって頂けると思う。
 従って、ここでは詳細は飛ばす。
 ただ、私はこういうことなら万事お任せしておけばすべてOKというケンタロウのお尻にくっついていくだけという体たらくであったことを、ここで告白しておくのみである。機会をうかがってはサイドを駆け上がり、クロスを放り込んだりして、それなりのアシストはできたとは思うのだが…。
 結果として、我々2人はプーケットに似つかわしくない爽やかで充実した一日を過ごすことができたのであった。
 一方の、喋らなければ男前なヒロヤ・ヒサシのコンビも、それなりの成果を収めていたらしい。否、一説にはヒロヤが一番オイシかったとも言われているくらいだ。これは、ヒサシの献身的・自己犠牲的なアシストがあってのものだった。とヒサシは、今でも酔っ払うと言っているのだが、それはともかく、あらゆるゲームにおいて、プレイヤーの役割分担は大事だということは確かだ。
 最後に、単独行動をとっていたシゲオについても言及しておきたい。他の4人がこの日の試合運びについてあれやこれやと語り合っていた深夜、シゲオは恍惚と後悔の入り混じったような何ともいえない顔をして帰ってきた。
 彼は多くを語らず、「最大級のディープインパクトに遭遇した」という言葉を残して、布団に潜りこんでしまった。夜のビーチでシゲオに何があったのか、真相は藪の中である。興味もないけれど。
 いずれにせよ、こうして我々のビーチ・ゲームは終了のホイッスルを聞くこととなった。