5日目:プーケット

 壮絶なる夜行バスを克服した我々は、輝く太陽、青い海、白い砂浜、水着の美女、その全てが眩しいプーケット島に降り立った。
 バトン・ビーチの北外れにある小綺麗なホテルに荷物を放り出して、早速ビーチへ繰り出す5人。バンコクの喧騒から解き放たれた我々は、ビーチボーイに「日本ノ男ハ青イネ」などとからかわれることも意に介さず、各種ツアーの勧誘もスルーし、トップレスの白人女性に目を奪われながらも必死に堪え、ビーチを駆けた。海を泳いだ(私は泳げないが)。海鮮チャーハンを食った。
 これを青春と言わずして何と言うのか。
 とは言え、プーケットのビーチに大満足だったというわけでもない。ビーチは、くたびれてるのに露出狂の白人のおっさん・おばはんと、目が“¥”マークになったビーチボーイであふれかえっていて、「グループで騒いで遊ばないときっついなぁ〜」という具合(一人で途方に暮れてビーチに立ち尽くしていた日本人の若者バックパッカーも発見)。海のきれいさも、人数と反比例するかのように大したことのないレベルになっていた。
 つまり、静かな島のビーチでビールでも飲みながらまったりするのが好きな私にとっては、「うーん、何だかなぁ」と思わざるを得ない有様だったわけである。他のメンバーはどうだったのかは知らないが。

 しかし、夜になるとプーケットの街は豹変する。
 昼間は気だるい空気が充満して人通りもまばらだった市街地は、昼間は一体どこにいたのだろうと思わされるくらいに様々な国籍の老若男女でごった返し、怪しい活気に包まれていた。
 我々5人も誘蛾灯に誘われる蛾のように街へと繰り出した。この時ばかりは、多少の出費も全く気にしない。ムエタイ・バーでちょっと気だるい試合をやるボクサーに喚声を上げ、気前よくビール瓶を傾け、そしてチップをばらまいた。
 とりわけケンタロウは、有象無象で混雑したバングラ・ロードで“Lady Boy”に(半ば喜んで)つかまって大枚をはたいていた。ついでに、娼婦や“Lady Boy”に良い印象を受けないなどと言っていたシゲオも、「探しにいかんとな」とか何とかブツブツ言いながらケンタロウの後を追いかけてつかまりにいった。
 そこに、数日前にたかだか10バーツや100バーツの金額でいがみ合っていた男たちの姿はなかった。