バリの水田

 今回泊まったホテルワカデウマ・リゾートは周りを田圃に囲まれていて、朝から鍬を担いだヒトがあるいたり、昼になると虫を駆除するためにガチョウが放たれたりしていて、何とも風情のある眺めとなっている。何でもホテルがこの辺りの土地を買い取って、昔ながらの田園風景を残すようにしているらしい。
 ウブド田圃は、山や岡などの斜面に作られるため、一つ一つの田圃の面積が狭く、ちょっとした段々になっている。トラクターとかの機械は見当たらず、おっちゃんやおばあちゃんがコツコツと鍬を入れている。日が登ると、小屋からアヒルの一隊がやってきて、田圃の虫除けにとりかかる。農薬もほとんど使っていない証拠だ。
 一昔前の日本の田圃もこんな感じだったんだろうかと思ってしまうが、日本と少し違うのは、ここでは、二期作・三期作が当たり前だということ。青々とした苗が植わっている田圃もあれば、刈入れが終わった後の裸の田圃もあって、緑と茶色が斑になっているのは、一期作が当たり前の日本から来た私には新鮮だった。

 まだひんやりしている朝、まだ完全に夢の中の母親を残して、一人田圃の中を散歩するのが、僕のこのホテル滞在の一番の楽しみだった。
 ひとしきり散歩を終えて部屋に戻ってくると、もう母親たちや奥さんは起きていて、こう言うのだ。

 「おはよう。さぁ朝ごはんにでも行きましょうか」