ウヌン・ダヌ・バトゥール寺院

 昼食を済ませた我々は、次いでウヌン・ダヌ・バトゥール寺院に向かった。名前から推察されるとおり、バトゥール山を祀るお寺である。雄大な山を背に、静かな佇まいを見せるなかなかの名刹だ。

 もともとはバリ随一の寺:アグン山ブサキ寺院に詣でたいと従姉夫婦にリクエストしていたのだが、旦那さんに「山ノ寺ハヤメタ方ガイイ。山ノ人ハ何カト金ヲ取ロウトスルカラ、とらぶるニナル。山ノ人ハ観光トイウモノガ分カッテナイ。阿呆ヤ」と言われ、その代わりに選んだのがこのお寺なのだ。
 ここも「山」の範疇に入るのでちょっとは覚悟していたが、やっぱり案の定、囲まれた。

 寺院に入るにはサロンの着用が求められるのだが、特に「チケット売り場」もないので、そこら辺の人たちが生活費だか小遣いを稼ぐために、我々のような観光客にサロンをレンタルさせようと突進してくるのだ。しかも、かなり高値かつ強引。
 そこに、我々緩んだ空気の親孝行ツアーご一行。まさに「カモネギ」である。

 他の国でそれなりに修行を積んだはずの私も、ちょっと手を焼いていた。従姉もバリ語で切り返すがなかなか上手く行かない。「あぁこれには母親たちもお手上げだろうな…」と思って振り返ると、

「NO!!」

と毅然として断固「山ノ人」を拒絶し、退散に追い込む母親×2の姿があった。

「なるほど、年季が違うよな」と私は妻や従姉と顔を見合わせたのであった。