図書館の新世界

 学生時代は、大学からの帰り道にアメリカ村があるというお財布泣かせな環境もあって、毎週のように中古レコード屋をハシゴした。就職してからしばらくは、代々木公園のそばに住むという分不相応な環境もあって、毎月のように何がしかのライブに顔を出した。独身のうちは、それなりに余裕のある財布がものを言って、欲しいCDは大概買っていた。
 けれども、ここ数年の音楽環境と言えば散々たるもので、去年なぞは買ったCDの枚数は両手で数えられるくらいだったりする。
 そんな中、少し前に頼まれ用事のついでにタワレコによって、ジャケ買いならぬバンド名買いをしてしまった。それがこの一枚。

図書館の新世界

図書館の新世界

豊かな声を持つシンガー・ソングライター田中亜矢。栗コーダーカルテットの活動を中心に、米アカデミー受賞「つみきのいえ」の音楽も担当した近藤研二。多くのユニットに参加、国内外で活動を続ける音楽家イトケン。2枚のソロアルバムが多方面で年間ベストに選ばれたシンガー・ソングライター宮崎貴士。この4人が揃って生まれる1つのポップスの「新世界」。新しい音楽がここにはじまります。

 贅言を尽くすまでもなく、仕事がら即買いなこのタイトル。ジャケットのコンセプトはレトロな<小学校の図書館>を意識してるみたいだが、図書館の本に貼ってあるラベルがデザインされていたり、縦書き右開きのブックレットにしてみたりと、細部にこだわりが散りばめられている。
 肝心の音はと言うと、(メンバーの方には大変申し訳ないことに)全然期待していなかったのだけれど、聴いてみると非常に良質なポップスじゃないですか。バカラックの影も見え隠れする芸達者なサウンドに、ジブリ作品の歌を任されそうな澄んだ女性ボーカルが絡んで、なかなか聴かせます。ぶっちゃけ、同時に購入したくるりとかPANTAとかよりも乳呑児受けは良かったですね。
 バンド名がバンド名だけに、図書館で音楽イベントでも…と思われてるのであれば、ぜひブッキングしては?と思います。図書館員の想像/妄想している「新世界」とはだいぶ違うだろうけど、それはそれで一つの民意として。