岩本千綱・大三輪延弥『仏骨奉迎始末』

岩本千綱,大三輪延弥 『仏骨奉迎始末』 高知, 岩本千綱, 明治33(1900)年, 96p.

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『暹羅土産 仏骨奉迎』(気賀秋畝撮影, 京都, 仏骨奉迎写真発行所, 明治34(1901)年)で紹介したが、明治33(1900)年、タイ王国より日本に仏骨(シャカの遺骨の一部)が譲られた。この一件の顛末をより詳しく述べたのが本書である。
この一件では、当時の駐タイ公使の稲垣満次郎が奔走したのだが、それは彼だけではなかった。タイでは留学僧の遠藤龍眠が、日本ではタイから一時帰国中の岩本千綱が、それぞれ稲垣の意を受けて運動を起こしていたようだ。またここには、稲垣がタイ王国に宛てた書簡や、奉迎使節団の日録なども収録されていいて、関係者の記述と一次資料から当時の様子を詳しく知ることができるのが、この本の最大の特長だろう。
本書は、「僧」と「信者」の問答形式で進められているが、これは前文で岩本が書いたように、主に国内の仏教徒に向けて書かれたためだろう。岩本が後述した内容を、在家の信者でありながら高知で仏教の復興運動にも関わっていた大三輪が文字に起こしているようだ。
なお、「仏骨奉迎始末」については、『仏舎利叢談』(弓波明哲著, 興教書院, 明治33年)にも詳しい紹介記事も見えるので、併せて紹介しておきたい。