ソンクラー


 ソンクラーでは、全くと言っていい位、何もしなかった。朝はG.H.の側の喫茶店で揚げパンと激甘コーヒー(2日目は、僕の顔を見ただけでこれが出てきた)を食し、少し休憩した後、本を片手に1km程離れたサミラビーチへ行く。昼過ぎまで木陰のベンチで寝転んでひたすら昼寝&読書。そして正露丸を飲む為だけに、ビーチ内にあるシーフードレストランで一番安いチャーハンを食す。4:00にはG.H.へ戻り、シャワーを浴びて読書。そして8:00には寝てしまう。弱りきった身体にはうってつけの療養スケジュールだった。サミラビーチはタイ人の為のビーチといった感じで、外国人旅行客の姿はたまにしか見ない。昼休みの時間ともなれば地元の人達がゴザを持ってピクニックに来るが、他所に比べれば静かなものだった。そもそも、タイ人はあまり海水浴しない。従ってビーチもさほど大したこともないが、昼寝するだけの僕には何ら問題は無かった。

 ソンクラー2日目(3/3)の夜にはやっと正露丸が効いてきたらしく、ようやく下痢がマシになってきた。まだまだ胃も重かったが、これ位は放っておけば大丈夫という位のものだった。そこで、次の日(3/4)の朝早くに、ハジャイに向けて、再びミニバスで移動した。いよいよタイを出てマレーシアへ行くのだ。
 ハジャイの長距離B.S.で降ろしてもらったが、どうもここ(ハジャイには2つ長距離B.S.がある)からはスンガイコーロック行きのバスは出ていないようだった。もう1つのB.S.へ行くのははっきり言って面倒くさかった。どうしようか迷っていたら旅行会社の客引きらしき人物が「乗り合いタクシーはどうだ?」と持ちかけてきた。「いくら?」「200B」高いと思ったが、バーツはもう要らなかったので、「180Bなら?」「OK」商談成立。その男のバイクでその会社まで連れていってもらった。カウンターで一応、」もう一回「いくら?」と訊くと、「180B」と返ってきた。どうも客引き氏はあわよくばピンはねしようとしていたらしい。
 30分程してから乗り合いタクシーは出発した。どうもハジャイ始発ではなかったらしく、僕が乗ると、席は1つしか空いておらず、しかもみんな席を倒して寝ていた。タクシーは快適だった、というより寧ろ、僕の腹具合いが快適だった。窓から沿道を眺めていると、やたらモスクやマレー系の人が目につく。いよいよマレーシアだ。今まで出会った人は口をそろえて「マレーシアはつまらなかった」と言ってが・・・
 国境のイミグレーションのすぐ手前でおろされた。タイを離れるに当たってその感傷に浸る暇も無く、人の流れ――主にバックパッカー達――に乗って、何となくマレーシアに入ってしまった。それ位、入国手続きはあっさりしていたのだ。ただ橋の上で日傘を持って国境を行き交う人達についていって、傘をさしてあげることで小銭を稼いでいた男の子が印象的だった。彼が僕の方に近づいてきた時は、勿論、「金なんてないよ」という風に手を振ってやった。すると彼はえらくあっさりとキビスをかえして小金持ちそうなマレー人の所へ走っていった。