旅の終わり

こうして、表向きは妻を接待し、裏ではソグドの痕跡を訪ねる我々のウズベキスタン周遊の旅は終わった。

正直なところ、もうちょっと色々あるのかと思っていたが、想像以上にソグドの痕跡はかき消されてしまっていた。イスラム化・トルコ化・共産主義の波は、思った以上に色々なものを押し流してしまっていたようだ。
それに、トルコ系のウズベク人がソビエト崩壊を機に新しくこの国を作ったときにそのアイデンティティとしたのは、同じトルコ系の英雄・ティムールである。イラン系タジキスタンならともかく、イラン系で、ムスリムでもないソグド人がこの国で主役になることはないわけだ。
辛うじて残されたものにしても、すでに研究し尽くされていて、今さら半端者が入り込む余地はない。しかしそれでも、実際にソグディアナの地を踏んだことで、距離感とか質感とかを多少なりともつかめたのなら、それはそれで意味があったと思いたい。少ない貯金を切り崩して大枚はたいたんだし。

そうそう、妻も今回の旅には満足していたようである。やっぱりそれが一番の成果だったりして。