釈宗演『錫崘島志』

釈宗演 『錫崘島志』東京, 弘教書院, 明治23(1890)年, 93p.

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以前紹介した『欧米雲水記』に先立つこと18年前の1889年冬、若き宗演は留学先のセイロン(スリランカ)から帰国した。慶應義塾の恩師・福沢諭吉から「仏教の源流」を学ぶべく勧められた(そして費用もカンパしてくれた)スリランカへの留学は3年にも及ぶものだった。
本書は宗演が仏教を学ぶ傍らに書き留めたスリランカの「風俗・人情・政治及び宗教等」をまとめた小冊子。帰国後の宗演からこの小冊子を渡された東海玄虎なる人物が一読して、スリランカ仏教の盛衰のみならず国の沿革、現在の政情に至るまで「適切の語」を以て記されていることから、出版を決めたという。
なお、宗演は後にスリランカ滞在中の日記も『西遊日記』として出版しているが、こちらについては改めて紹介することにしたい。

宗演が滞在していたゴールにて