勉強会@中央線NEOのライフサイクル


 就職2年目の2003年、勤め先の同期と「座★珍竹林」という集まりを立ち上げたのが僕と勉強会との出会いでした*1。この勉強会では、若手〜中堅どころの先輩に自身の「業務」について話してもらうというのをメインにやっていました。最初はそれなりに盛り上がっていたのですが、2年くらいで自然消滅しました。マンネリ化してしまったということもあると思いますが、僕たち自身が業務で経験を積むにつれて身内の話を聞いても物足りなくなったということや、僕たち自身が語るべき立場に移りつつあったということもあったのかなと思います。いずれにせよ、それが「座★珍竹林」という「学びの場」のライフサイクルだったんだろうと思います。
 その後、幾つか外でやっている勉強会に顔を出したりしてから、2008年に「勉強会@中央線(仮称)」をスタートさせました。それから5年と少し、「勉強会@中央線」、「勉強会@中央線NEO」と看板を変えながら継続してきたわけですが、今月をもってひとまずの区切りを付けることにしました。この会の成り立ちや場の設計、或いは実際の会の運営についてはこれまでも書いてきたので、ここでは振り返りをしておきたいと思います。

2008年(10回開催)

 振り返ると、高円寺ノラやという抜群の「場」を足がかりにして、1月1回(夏休み除く)というペースを忠実に守って開催を重ねていくごとに会のスタイルが固まっていった一年だったなぁという印象です*2。スピーカは、幹事がそれぞれ誘ってきた「コア」な参加メンバの持ち回りという感じでした。また、12月には忘年会企画ということで、参加者全員でライトニングトークというのもやってみました*3

2009年(11回開催)

 ある程度確立したスタイルを継承し、洗練していった一年だったという印象です(名称から「(仮称)」を取ったのもこの頃でした)。また、既存の参加メンバ以外にスピーカをお願いしていくというスタイルにシフトしていきました。一方で、月1回のペースで会を続けることに次第にマンネリが生まれつつあったような気もします。そんな背景もあって、この年限りで終了する予定でしたが、それなりに安定的に運用できているこの「場」を閉じることは勿体ないという思いもあり、看板を少しだけ変えて会を存続することにしました。

2010年(5回開催)

 看板をマイナーチェンジして心機一転臨んだ3年目は、細かいところで色々と試行錯誤を重ねた一年だったと言えるかもしれません。回数を抑えて負担を減らしつつ、より多彩なゲストスピーカをブッキングして、マンネリを回避するようにしました*4。また、参加メンバもコアな参加メンバだけでなく、話のネタに合わせて知り合いを中心に声をかけたり、SNSを使って募集したりして、場が固定化しないようにも気を付けたりもしました。

2011年(6回開催)

 前年に引き続き、同じスタイルで開催しました。途中、ustreamによる中継とか違うスタイルを模索したりもしたのですが、結局、従来のスタイルを変えることはしませんでした。僕の中では、2010年から2011年にかけての2年、そしてとりわけこの一年が≪場≫として最も円熟していた時間ではなかったかと感じています。コアメンバの方たちと3年かけて築いてきた≪安定≫と、多彩なゲストと、トピックに応じた参加者が加える≪刺激≫のバランスが良かったのかなぁと。なお、3.11後のテーマ設定には、東日本大震災の影響も少し出ています。

2012/2013年(7回開催)

 2012年も前年と同じスタイルで開催したのですが*5、(微調整は行っているとは言え)同じようなスタイルで5年続けることによる「マンネリ感」がいよいよぬぐい難いものになってきた時期だったと思います。そして極めつけは、自分の本業の仕事の内容が4月で変わったことに伴い、その日の夕方まで行けるかどうか確定しないという、勉強会幹事としてはあり得ない状態になってしまったのが最大の誤算でした。(共同幹事がいるとはいえ)ブッキングした張本人の幹事が遅刻する…ということが何度かあったことから、2013年3月限りでこの≪場≫を閉じることにしました。

 ざっとまとめるとこんなところです。正直なところ、これまでのスタイルで続けて行くのであれば大した負担でもないし、そもそも「あの人の話が聞いてみたい」という僕の好奇心が摩耗したわけではないので、「このまま続ける」という選択肢もあり得たと思います。そして、一つの「場」を長く続けることにより生まれるものも、あったかもしれません*6
 けれども、やっぱり「やめる」という決断をしました。去年の夏頃だったと思います。
 実は、「やめる」と言った後も「やっぱりやめるのをやめようかなぁ」と思ったりもしました。けれども、そんな折に上田信行さん・中原淳さんによる『プレイフル・ラーニング』という本に、「学びはロックンロールだ!」というフレーズが踊っているのをみかけました。そして、この勉強会@中央線NEOという「学びの場」は今も「ロックンロール」なのだろうか?と自問すると、「やっぱり今がやめ時だよなぁ」と。
勉強会という場は、参加者の≪コモンズ≫であると同時に、極めて属人的な≪場≫でもあります。さらに言うと、幹事が何らかの理由で継続することができなくなった/モチベーションを失った時には、閉じざるを得ない運命にあるのです*7。そう考えると、やはりこの勉強会@中央線NEOはその役目を終える時が来た、換言すると、僕にとってとても居心地の良い「サードプレイス」だったこのささやかな会も、≪場≫としてのライフサイクルを終えたんだろうなということで、色々なことが腑に落ちたわけです。

プレイフル・ラーニング

プレイフル・ラーニング

 最後になりましたが、これまで勉強会@中央線NEOに関わって頂いた皆さん、どうも有り難うございました。これから先、突発的に再び高円寺で、或いは別の場所で「ロックンロールな場」を設けることがあるかもしれません(「ロックンロール」じゃなかったらごめんなさい)ので、その時にはまたお会いしましょう!

*1:「珍竹林」というのは、当時よく行っていた近くの安い居酒屋。その後、閉店してしまったようですが…

*2:開催場所は基本的にノラやさんでしたが、初回だけ日程の調整がつかず、旧知のバー高円寺コネクシオンさんにお願いしました。

*3:ライトニングトークは、翌年にも2回やりましたが、結論だけ言ってしまうと「微妙」でした。コアな参加メンバしか来なかったというのがその理由です。他にやりようがあったかもしれませんが…

*4:ゲストスピーカには、意識的に自分と同年代の方を選ぶようにもしました。自分と同世代の面白い人と話したいなぁという思いがあったこともあり

*5:2012年5月開催から、ノラやさんの都合で開催場所を三軒隣の系列イベントスペース高円寺HACOに移りましました。

*6:なので、100回以上続いている京都図書館情報学学習会ku-librarians勉強会なんかはすごいなぁと思います。この2つについては「京都」という地域性も影響していると睨んでいますが。

*7:継続させていくために「引き継ぐ」というやり方もありますが、≪場≫としては良くも悪くも変遷して行くのかなぁと思います。