伊達虎一『欧羅巴視察日記』

伊達虎一『欧羅巴視察日記』京都, 伊達虎一, 明治34(1901)年, 124p.

本文

伊達虎一という人は、(詳しいことはよく分からないが)京都で西陣織の商いを生業としていたらしい。明治33(1900)年の第5回パリ万博に際しては、京都西陣織物同業組合の推薦(加えて、農商務省や京都商業会議所の嘱託も受けていたらしい)により、博覧会参加&視察のために同年3月から4月にかけて洋行した。本書は、その時(4/1〜10/2)の日記をまとめた自費出版本。
博覧会視察のほか、フランス(リヨンなど)やイタリア(ミラノなど)で繊維関係の工場や学校を訊ねたり…といった旅の一部始終が記述されているが(息抜き?にローマ名観光なんかもしているようだが)、日記をそのまま製本したような体裁ということもあって、内容自体は興味がなければそれほど面白いものでもない(最初はテンションが高いからかイラストなんかもあって詳しいが、段々と記述が簡潔になっていくのも、大方の例に漏れていない)。
個人的にこの旅行記でおっと思わされたのは、9月19日に神戸に到着した際に出迎えてくれた人の名簿(前日入りか当日入りか等の区別も書かれている)や、その人たちの世話をした人の名簿(会計、庶務、接待、人力車手配等の所掌も書かれている)が載っていたこと。自費出版ということもあるかもしれないが、出迎えてくれた人々についてここまで詳細に書いた旅行記を、僕は知らない。