勉強会@中央線NEOのレシピ


勉強会@中央線NEOを始めて丸4年になります。年上の友人たち(敢えてそう呼ばせて頂きます)と始めたときは、正直なところ、こんなに続くものになるとは思っていませんでした。実際、2年でやめようと考えていたのですが、結局、看板と頻度を変えて、続けることにしました(他にもチューニングしていたりしますが)。
それはやはり、僕自身が勉強会@中央線NEOという、恐らく他に例のないこの緩くて少し尖った「場」が好きだからなのだと思います。僕自身が興味の赴くままにテーマを貪る「場」として、コーディネートとファシリテーションの実践を行う「場」として、そして楽しく飲み語らう「場」として。
ところで、東京大学中原淳さんが手がけているラーニングバーに2度ほど参加したことがあります。そこでは、幾つもの気づきを貰いましたが、その一つに「ラーニングバーはオープンソースです」という言葉があります。要は、ラーニングバーで提示されている様々な手法やTipsは、オープンソースコードとして他の場でどんどん使ってほしい、ということです。そして、そのレシピは書籍という形で提供されています。
そんなわけで、勉強会@中央線NEOはラーニングバーとは比較にならないささやかな「場」ですが、誰かの何かに役立つかもしれないと思うので、一人の「場」の創造/運営の実践者として、「場」の創造/運営のに興味をもたれる方々を対象にして、(中原さんの本を参考にしつつ)そのレシピを書いておこうと思います。もちろん、これで興味を持って頂いた方の参加も歓迎します。

勉強会@中央線NEOについて

2009年のARGカフェ@横浜で行ったライトニングトークで、成り立ちや場の設計については書きました。ここでは、その内容を要約するのに留めたいと思います。

  • コンセプトは「中央線に縁のある、そして『情報』に興味のあるヒトが美味い料理と酒を楽しみながら、持ち寄ったネタを肴に、聴いたり、話したりする『ゆるい場』」。
  • 参加者に「中央線に縁のあるヒト」、内容に「情報ネタに限る」というゆるい制約を加えている。

要は、様々なバランスを見た上で「場」の設計をしていますよ、ということです。色々な方に参加して頂いていますが、皆さん口をそろえて「こんな場は初めてだ」と仰るので、(僕は他の事例を詳しく知っているわけではないのですが)ユニークな「場」と言えるのかもしれません。勉強会でもない、飲み会でもない、ユニークな「第三の場所」。無論、近年の勉強会ブームの中で生まれた一つの変態形でしかないのかもしれませんが。

勉強会@中央線NEOの準備(スピーカ編)

最初は、誰にスピーカをお願いするか、です。これまで多くの方にお話し頂いてきましたが、概ね次のようなパターンに集約されそうです。

  • 参加メンバにお願いする(人ありきでテーマを決める)
  • 僕が興味のあるテーマに合致する人を探し、お願いする(テーマありきで人を決める。既知の方でない場合もあり)
  • 参加メンバ推薦の方にお願いする(上2つの折衷?)

(当初は参加メンバに話してもらうことが多かったのですが)ここ最近の比率としては、上から順番に1:3:1位かと思います。1つ目だとマンネリズム内輪化の罠にはまりそうですし、3つ目もそうそう毎度期待できない。となると2つ目ですが、幹事のモチベーション持続の観点でも、これが一番良いのかなと思っています。なお、お願いするときはだいたいメールベースで、会の趣旨や話して頂きたい事柄を列記して、ストレートに「お話し頂けますか?」と送ります。この時、「謝金はお出しできないですが、美味い料理とビール&日本酒の飲み放題はご用意します」というのも必ず伝えます(笑)。
どんな人にどんなテーマで頼むかなどの明確な基準が特にあるわけではないので、「面白そうだな」とか「この人なら受けてくれそうだな」といった個人の感覚によるところが大きいというのが、4年やってきた正直な感想です。いきおい、普段から「この人に話してもらうと面白かな」というアンテナを張ることになります。
少し脱線しますが、実際に誰かに頼む時には「勉強会」という看板(道具?)は便利だなと思います。「あなたと飲みたい」ではなかなか誘いづらいですが、「勉強会であなたの話が聴きたい」だと、声はかけやすいですし、多少大物でもそうそう無碍に断られることはありません(それが、「勉強会」という言葉で括れない「場」であるにも関わらず、「勉強会」という看板を降ろさない理由でもあります)。
それ以外に事前の準備というのは、(した方がいいのかもしれませんが)あまりしません。事前に打合せ(飲み会)をしたこともありますが、基本的にはメールで内容のやり取りをする程度です。無論、当日に向けて、文献の読み込みレベルの最低限の知識の仕入れはしておきますが。

勉強会@中央線NEOの準備(その他編)

次は、場所を押さえます。隔月開催(2011年は奇数月にしました)というのはこちらの都合ですが、店を貸し切る都合上、最優先されるのは店の都合です。僕たちがお世話になっているノラやさんは月曜日が定休日であるため、この日を特別に開けてもらっています(店の方としても、通常営業を避けられるので、その方が有難いのだとか)。なので、まずは尾店の都合を確認して候補日程を決めた上で、スピーカ候補の方との日程調整に入ります。
以上が確定した段階で、告知&参加者募集に移ります。店のキャパシティから、最大11名としています(10名を切ると店の収入が減るので、10名を切らないようにもしています)。告知は、

  • 連絡用メーリングリスト(2回以上参加された方のうち、希望者を登録しています。所謂「常連さん」がここに入ります)
  • 興味のありそうな知り合いに打診(テーマに応じて、ピンポイントで誘います。参加メンバ固定化も回避できます)
  • twitterfacebook(枠に余裕が見込まれる場合。たまに参加希望がありますが、ハードルは高いようです)

といった手段によりますが、ここ最近の比率としては、上から順番に2:2:0.5位かなと思います(打診枠を増やすことで、参加メンバの固定化をさけることもできています)。申込のペースとしては、告知開始直後に第一波が、開催直前に第二波がある印象ですが、前日までには店に最終人数を伝えるようにしています。
また、参加者予定の方には、次のことを必ず伝えておくようにしています。

  • 費用は3000円強で、飲み放題+食事つきであるため、当日キャンセルの場合はお代を頂くこと。
  • 当日の運営をよりスムーズにするために、遅刻や早退は極力しないで頂きたいこと。

ここまでやってから、いよいよ当日を迎えます。

勉強会@中央線NEO当日

19時頃、店に到着します。店に到着してからは、店のオーナーと簡単にその日の段取りを確認したり、少し勇み足的ですが、お酒を飲んだりしてスピーカや参加者が来るのを待ちます(店の場所が少し分かりにくいので、電話は手放せませんが)。また、スピーカにも余裕を持って来てもらうように伝えておき、到着次第、(あれば、ですが)持込PCのプロジェクタへの接続や投影画像の確認といったセットアップ作業を行います。そうこうしているうちに参加者も集まってきますが、初対面であれば名刺交換をしたり、既知の方同士であれば適当に歓談してもらうなどして、場を温めてもらうようにしています。
そして19時30分頃、いよいよ勉強会@中央線NEOが始まります(この段階で、なし崩し的にビールが注がれ、飲み会としてはスタートしています)。まず最初に、5分くらいで会の趣旨今日の段取り、そしてテーマ設定の問題意識を幹事である僕の方から話します。この時に最低限伝えるようにしているのは、

  • 勉強会にありがちな「聴く→(考える)→帰る」ではなく「聴く→考える→話す」という双方向的な対話を楽しむこと。
  • 「レクチャー→質疑応答」ではなく、レクチャーの途中のツッコミや脱線ディスカッションも歓迎すること。

といったところです。その後、参加者の自己紹介を行ってから(全員そろっていなけれ後回しにすることもあります)、いよいよスピーカにお話頂きます。殆どの方がプレゼンテーション資料をご用意されていますが、中にはレジュメや抜き刷り、或いは対談形式でやる場合もあって、ここはスピーカの方次第といったところです。
スピーカには、大体1時間程度の話す内容を用意するようにお願いしていますが、この長さだと途中のツッコミや脱線を入れると、ちょうど21時過ぎに一通り終わることが多いです。そして、そこから22時までがフリーディスカッションの時間です。最初は、僕の方から質問を振ったりしてファシリテ―ションっぽいこともしますが、皆さんお酒も回って舌も滑らかになっているので、基本的にはその場の流れに委ねています。22時で中締め(お会計)して、その後は有志で時間の許す限り飲んでいます。
あと、当然ですが、終了後のフォローも(メール程度ですが)欠かさないことも大事です。

勉強会@中央線NEOのこれから

この場を今後どうするのか。2009年一杯で「勉強会@中央線」を終了したときは、参加メンバの固定化などもあって陥りかけていたマンネリズムを断ち切るという思いがありました。けれども、看板を微修正して継続したのは、やはりこのユニークな「場」を失うにはあまりにも惜しいと幹事の間で話が一致したからです。そして2年が経ちましたが、この2年は「場」の活性化/流動化も念頭におきながら運営してきたので、マンネリズムに陥ることもなく、ほぼ狙い通りの「場」ができていると思っています。これを一度壊して…ということも考えないではないですが、今の僕にはその「次」の形は見えていません。なので、「次」の模索は別の「場」で考えることにして、勉強会@中央線NEOには手を加えませんでした(実は少し飽きた時に、ustream中継等も考えたのですが、色々考えた挙句に結局元の形態に戻したということもありました)。
確実に言えるのは、これからも、僕は自分の一つの拠り所、或いは道具として、この勉強会@中央線NEOという「場」を継続していくだろうということです。中央線沿線に住んでいる限りは、ですが。いずれ、どこか別の場所に拠点を移した時には、その場所に応じた「場」を創ろうとするかもしれませんが…。