藤岡了空『朝鮮土産』

藤岡了空 『朝鮮土産』 京都, 法蔵館, 明治27(1894)年, 22p.

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浄土真宗の僧侶である藤岡了空は、日清戦争の始まった明治27年、依頼を受けて渡韓国し、ソウルの王城の警備に当たっている日本軍の兵士たちの慰問を行った…のだが、藤岡の狙いはそれだけではなかったようだ。任務を終えた後は、街中の書店を周り、同地刊行の浄土三部経無量寿経観無量寿経阿弥陀経)を探しまわっていたらしい。結局、なかなか思うようには集めることができなかったようだが、ソウル市内の三角山内院刊行の「観無量寿経」だけは何とか入手できたらしい。
そんなわけで、本書の後半は、帰国後に藤岡が他の版本と突合して校訂を行った「観無量寿経」が掲載されている(ここでは序文のみ)。「軍人が身命を投げうって戦っているのに、僧侶は何も学ばずに帰れようか」と意気込んでいた藤岡の、正しく「朝鮮土産」である。