鏑木余三男『朝鮮国元山出張復命書』

鏑木余三男 『朝鮮国元山出張復命書』 東京, 外務省通商局, 明治28(1895)年, 42p.

<本文>

本書は、非職(嘱託のようなものか)の農商務技手・鏑木余三男(加賀生まれ)が元山水産株式会社の依頼を受けて元山近海の水産資源・漁業調査に赴いた際の復命書である(当時の農商務大臣・榎本武揚宛)。とは言え、時は折しも日清戦争のさなか。鏑木の調査もその余波を受けて、思うに任せなかったようだ。調査に協力してくれるはずの関係者はみな、軍夫或いは通訳として徴用されてしまっており、9月の平壌陥落に伴ってそれらが解かれるまで調査を始めることができなかったという。
ちなみに、鏑木の兄は水産伝習所設立に関わった関澤明清であり、明治32年には兄弟で、冬はマグロ漁、夏は捕鯨やオットセイ漁をおこなう房総遠洋漁業会社を起こした。