ポカラからの手紙


 昨日、ポカラに着きました。カトマンズからは6時間ほどの道のりです。
 ここは、遠くに美しいアンナプルナを望む人気のリゾート地でもあるのですが、時節柄、ここも観光客の姿もまばらで、あまり活気はありません。泊まっているホテルも、できて何年も経っていない瀟洒な造りなのですが、客は僕らだけで、値段も100ルピーと破格です。ここでも、土産物屋でちょっと買い物をするだけでも、あり得ない程感謝されるので、値切る気力も起きません。それどころか、ついつい必要のないものまで買ってしまいます。麻のシャツとか、カレンダーとか。

 今朝は、宿の若主人―僕よりも2つ年上なだけです―の勧めで、タクシーをチャーターしてチベタン難民キャンプに行ってきました。ここの難民キャンプは、ネパールでも一番古いものだそうです。
 難民キャンプとは言え、それなりの時間も経過しているので、一つのそれなりの規模の集落のようなおもむきで、同じような旅行者がちょくちょく来るのか、土産物屋の露店も出ていました。そこで通りかかったカム出身の若い僧侶たちと話したのですが、その時に僕たちが「ラサから来たんだ」と言うと、みんな目を輝かせて食いついてきました。カトマンズの難民キャンプでもそうだったのですが、ラサに行くことなど夢のまた夢である彼らを目の前にすると、気楽な旅行者という自分の立場が後ろめたくなります。

 午後は、リュウが来るんじゃないかなと思って、カトマンズからのバスが着く時間を見計らってバスターミナルに行ってみました。ところが、バスから出てきたのは、何とヨウコさんとハッカクとノブの3人でした。3人ともリュウカトマンズを出たのかどうかは知らないとのこと。やっぱり気分が変わったのかもしれませんが、こればっかりは確認のしようがありません。3人を自分たちの泊まっているホテルに案内しようとしたのですが、その時、バスに群がっていた客引きたちに物凄い剣幕で怒鳴られました。
「旅行者風情が俺たちの仕事を取るんじゃない!!」
 そんなことを言っていたと思います。僕らとしては、悪気なく顔見知りを案内しようとしただけなのですが、この観光不況の状況にあっては軽率すぎたかかもしれません。朝に引き続き、お気楽な旅行者という自分の立場が嫌になってしまいました。

 ともあれ、今夜は、これから5人で若主人の手料理を堪能して、明日の出発に備えます。そう、明日はいよいよインドです。