カトマンズからの手紙(5)


 カトマンズに来て20日ほど経ちました。ここで過ごす日々は、ひたすら怠惰なものになっています。
 朝はゆっくり起きて、古本屋で買った文庫片手にいつもチャイ屋とモモ屋を梯子し、夜にはリュウやリョウ、タダヒコ、ナガイ君たちと合流して日本料理屋へ。観光するところもなくなった今となっては、タメルから一歩も出ることもなくなってしまいました。
 とりわけここ2,3日は、特に不精がひどくなっています。実は、この辺りを旅するバックパッカーがよく罹っている「卵げっぷ病」にかかっていたのです。細菌か何かが胃に入って悪さをするらしいのですが、胃もたれ・下痢だけでなく、腐った卵の臭いのするゲップが止まらなくなるというのが特徴的な症状です。これにかかっていた数日の間、必要最低限以外は薄暗いホテルの部屋で一人、ゲップばかりしていました。

 まったくもって非生産的です。旅自体、非生産的なものなのですが、これはもう旅ですらない。
 ここはもう出なければいけない―そうは思うのですが、なかなか思い切ることができませんでした。けれども、昨日、大学の研究室の後輩から彼女が取り組んでいる卒論関係の相談のメールが来て、その返事を書いている時に、急に「焦燥感」のようなものに駆られました。
「こんなことをやってる場合ではない」
 旅において、次のステップに進む「きっかけ」というのは、いつも突然に湧いてくるものです。

 そんなわけで、明日、カトマンズを出ます。前に書いたように、リョウとバングラデシュを目指すことにします。アンナプルナのトレッキングにするかどうかで迷っていたリュウも、一日遅れで追いかけると言っています。
 正月をバングラデシュで迎えるとなると、年末までにカルカッタまでに着かないといけません。カルカッタへダイレクトに行ってしまうには時間があるので、バナーラスに寄ることにしました。バナーラスに行くとなると、カトマンズから行くよりは、ポカラから下った方がよい。となると、次の目的地はポカラ。ターゲットを決めると、そこから逆算していく形で旅のルートも決まってきます。

 タダヒコやマサ達にお別れしてから、タメルのパン屋で明日の朝食を買い込みました(ここは、味の良さもさることながら、夜の8時からは"happy hour"とう半額セールが始まるの重宝していました)。明日は6時30分にバスが出ます。ここしばらく「早起き」というものと無縁の生活だったので起きれるのかどうか心配ですが、今夜は早めに寝ます。