仲小路廉『欧米巡遊雑記 米国之部』

仲小路廉述, 長谷川友次郎編 『欧米巡遊雑記 米国之部』 東京, 長谷川友次郎, 明治33(1900)年, 130p.

<本文>

仲小路廉(1866-1924)は、周防生まれの官僚・政治家。
明治32年の4月から、東京控訴院検事兼司法省参事官の任にあった仲小路は、司法制度調査のためアメリカ・イギリスへの視察旅行に赴いた。折しも、明治政府の宿願の一つであった治外法権の撤廃が成ろうとしていた頃である(撤廃は同年7月)。外国人を日本の法廷で裁くことになった際にできる限り列国のそれと違わないようにしておくために彼の地の事情を細大漏らさず見てくるように、というのが派遣の趣旨だったようだ。
同行者は大審院判事・馬場愿治と横浜地方裁判所検事正・香坂駒太郎。本書は、香坂が帰国後の公務の合間に、道中つけていた日記や各種文献を参照しながら個人的にまとめていた文章を、東京地方裁判所検事局監事官・長谷川友次郎に勧められて刊行したもので、(当然ながら)アメリカでの事項のみが記述されている。
仲小路たちのアメリカ滞在は4月から7月。4月28日にサンフランシスコに到着して鉄道で大陸を横断、ワシントン・ボストン・ニューヨークなどの東部の諸都市を巡っている。米国司法省や合衆国高等法院について詳しく記述されているなど、彼の職業ならではの内容が印象的だ。